ぷしけ 日常

理人を目の前にどうすることもできない詩織。
牛若時緒 37 0 0 06/06
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

詩織の手から汗がにじんでいた。
詩織 「…り、理人さん」
正雄は濡れた子犬のようになっている理人にタオルを差し出し話を始めた。
正雄「どうやら老朽化でアパートが建て直しらしい ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

詩織の手から汗がにじんでいた。
詩織 「…り、理人さん」
正雄は濡れた子犬のようになっている理人にタオルを差し出し話を始めた。
正雄「どうやら老朽化でアパートが建て直しらしいんだ…」
理人はきまり悪そうにうなづいた。
正雄は何かを察した。
理人「あの…迷惑でなければ…」
出された麦茶を飲み一気に何かを言おうとする。詩織は顔を赤らめて
詩織「今後ともよろしくお願いします。」
正雄は目を見開いた。何となくいい雰囲気だとは思っていた。
やがて叔母の春江がレインコート姿で戻ってきた。

暴風雨の中、パーマのセットが乱れた春江。
正雄は目に涙を浮かべている。
いつかそんな日が来るのはわかっていた、けどあまりに唐突過ぎる。
この苦学生に身寄りが少ないのも知って雇っている。
詩織が惹かれる理由もなんとなくわかる。が心の準備ができていない。
春江「なーんしよんの」
半額になったすきやきの肉を並べた。
正雄「姉ちゃん、詩織に恋人ができてしもーた」
春江は満足げに笑う。
春江「詩織ちゃん、この馬鹿弟には私からなんとか言うとくけえ、理人ちゃんの荷物、ほれ」
理人はタオルにくるまったまま、段ボールを持ち出す。
正雄「ビール飲んでもええか」
春江「怒られても知らんよ。二人を祝ってあげなさいや」
理人は圧倒された。昔の自分をかばって亡くなった母に瓜二つの春江。
一方で詩織は空き部屋に案内した。
詩織「暗うてごめんな。あと渡したかったものあるから荷ほどきしてて」
暴風雨の晩に帰らぬ人となった両親は今頃どこをさまよっているのだろう。
理人はかつての幼い日の自分を思い出したが、そんな自分をいつくしもうと決めた。
ノックするドアの音。開けると詩織が桃色の便せんを渡した。
詩織「意識すると恥ずかしいね。これからもよろしくね」

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。