大学の地下に何かある ドラマ

「東京の地下には秘密がある」 ある年、千代田区の勇名大学に通う2人の学生が行方不明になった。2人の共通点は、大学の地下駐車場の奥に繋がっていると言われている‘ある秘密‘を追っている事だった。 勇名大学1年の田所快は、陰謀考察サークル「ホームズ」に入部する。最初は普通のミステリー研究会と思っていたが、噂されている‘ある秘密‘と対峙することになり…
古堅元貴 51 0 0 06/11
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第一稿

【登場人物表】
田所  快  (18)大学1年
鬼島  信人 (22)大学4年
梶   由貴乃(21)大学3年
山野辺 健  (20)大学2年


灰谷  雄一 (2 ...続きを読む
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【登場人物表】
田所  快  (18)大学1年
鬼島  信人 (22)大学4年
梶   由貴乃(21)大学3年
山野辺 健  (20)大学2年


灰谷  雄一 (22)大学4年
間瀬  洋  (22)大学4年
間瀬  さくら(19)大学2年/洋の妹
横溝  隆  (85)株式会社ジャパンブラッシュ会長
来栖  ラスク(26)俳優


○ 東京・千代田区・勇名大学・地下駐車場出入口(夜)
裏門横にある地下駐車場入口へ入って行く数台の黒い車。その最後尾には公用車。

○ 同・入口横の守衛室(夜)
通過した車を見ている守衛1,2。
守衛1「・・・あのー地下って何かあるんですか」
守衛2「・・・なんで」
守衛1「深夜なのに車通るじゃないすか?大学は閉まってるのに」
守衛2「たしかにねー」
守衛1「それにやたら高級車じゃないすか?もしかしてやばい場所と繋がってたりするんですかね?」
守衛2「・・・消されるよ」
守衛1「え?」
守衛2「詮索したら。実際枠が空いて、君がここに採用されたのも、前の子が興味本位で覗きに行ったあとに、音信不通になったからだから」
守衛1「まじすか・・・」
守衛2「まじ・・・なわけないじゃない。うそうそ」
守衛1「・・・」
×     ×     ×
朝。深夜の車が、駐車場から出てくることはなかった。

○ 同・正門前(朝)
正門前には多くの新入生の群れ。その中に田所快(18)。
多くのサークルが、新入生へサークル勧誘をしている。人の多さと勢いに戸惑っている快。
×     ×     ×
快、歩いていると、あるサークルの学生に。
学生1「君バスケやってた?やってないだろ、じゃあやろう!」
学生1、サークルの勧誘チラシを快に渡す。
快「・・・ありがとうございます」
快、少し進むとまた別のサークルの学生に。
学生2「女の子いっぱいいるよ!出会いあるよ!」
学生2、サークルの勧誘チラシを快に渡す。
快「ああ・・・」
勧誘のチラシ束をどんどん抱える快。

○ 大教室(昼)
オリエンテーション前の教室。快、教室に入ると、既に数十人の生徒が座っている。
×     ×     ×
1人で座っている快。周りでは「インスタで絡みましたよね?」、「ああ!よろしくお願いします!」といった既にSNSで繋がりを持っている学生や、「2週間ぶり!」、「おまえと会ったら大学の感じしねえわ!」などの高校からエスカレータ―で進学した内部生同士が喋っている。
気まずさを感じている快。
×     ×     ×
オリエンテーション中。教壇で大学職員が話している。
大学職員「高校のように決められた時間割、1年を共にするクラス活動なんてありません。自らが主体的に行動しないと、何も得られずに4年間はすぐ終わります」
それを聞いている快。

○ 廊下(昼)
オリエンテーション後。快、教室から出ると、再びサークル勧誘の学生たちの群れが。
学生1「(快に)バスケやってた?やってないね、じゃあやろう!」
快「ああ・・・いいです・・・」
足早に去っていく快。

○ 裏門(昼)
人混みを避け、正門ではなく、裏門から出てきた快。すると道路を挟んだ丘で、集まっているサークルらしき集団。
快「?」

○ 裏門前の丘(昼)
駐車場入口方向に向けられている三脚にはスマホ。
鬼島信人(22)、梶由貴乃(21)、山野辺健(20)。鍋を食べている。
山野辺「(駐車場入口を見て)なさそうですね」
鬼島「こういう群衆でごった返してる日こそ、動きがあるかもしれない」
由貴乃「味噌ですか?キムチですか?博多風ですか?」
鬼島/山野辺「博多で」
博多風の鍋の素を入れる由貴乃。
由貴乃「これカモフラージュになってます?」
快、彼らに近づいてきて。
快「あ、あの・・・」
由貴乃「はい?」
山野辺「え、あ・・・」
看板には「陰謀考察サークル・ホームズ」と書かれている。
鬼島「新入生?」
快「・・・はい」
山野辺「陰謀考察サークル、ホームズです!」
快「・・・えっと」
山野辺「まあいわゆるー、世間で出回ってる陰謀論とか都市伝説を皆で集まって考察しあったり、実際にその現地に行ってみたり、あとは息抜きでハーフマラソンしたり」
快「ハーフマラソン?」
由貴乃「ハーフマラソンはしない」
山野辺「冗談です・・・」
チラシを快に渡す由貴乃。
由貴乃「今度、新歓オリエンテーションでリアル脱出ゲーム行くのでよっかたら」
快「あ・・・ありがとうございます」
鍋とカメラが気になる快。
鬼島「食べる?」
快「いや・・・え何されてるんですか」
一同「!?」
快「今は何を・・・」
鬼島「この4月特有の喧騒を見ながら、鍋を食べようとしている」
快「・・・」
由貴乃「よかったら」
由貴乃、紙皿に入った鍋と割り箸を快に渡す。
快「あ、・・・いただきます」
食べる快。
快「・・・おいしいです」
×     ×     ×
夜。鍋の片づけをしている由貴乃と山野辺。駐車場入口を見ている鬼島。
鬼島「もうちょいいるわ。寝袋持ってきたし」
山野辺「まじすか」
鬼島「気にしないで」
由貴乃「・・・わかりました」
×     ×     ×
寝袋に包まれながら、駐車場入口を見ている鬼島。
×     ×     ×
1時間後。寝袋に包まれながら、駐車場入口を見ている鬼島。近くのベンチでカップルがイチャイチャしている。
×     ×     ×
1時間後。駐車場入口を見ている鬼島。
激しさを増すカップルが気になってしまう。
×     ×     ×
数時間後。カップルはいなくなっている。
そして寝てしまっている鬼島。

○ 裏門(日替わり・朝)
登校する快。丘を見るとホームズのメンバーはいない。

○ 教室(朝)
快を含め、20人前後の基礎ゼミの授業が行われている。
教授「基礎ゼミは高校で言うところの、いわばホームルームです」
聞いている学生たち。
×     ×     ×
自著を手に掲げ、講義をしている教授。
教授「昨年僕が出したこの本を使って、今年度は講義を進めますので、来週までに購入してきて下さい」
素直に聞いているが、内心は「ホームルームで自分の本売るなよ」な気持ちの学生たち。
×     ×     ×
授業後。交流を含めた数人の学生たちは共に移動する。
一方で、1人で移動する快。

○ 食堂(昼)
昼ご飯を食べようとするも、券売機には長蛇の列。
そして利用しているのは友達同士で食べている学生ばかり。諦める快。

○ 公園(昼)
ベンチに座り、コンビニで購入したパンを食べながら、サークル勧誘でもらったチラシを見ている快。

○ 映画サークルの活動部屋(夕)
サークル長が活動内容を新入生たちに説明している。
サークル長「まあ映画サークルって言っても、春は鴨川旅行、夏はテニス合宿、秋は京都旅行、冬はスノボー合宿もあるから、堅苦しく考えないでね」
「ほんとに!」、「ウェルカムよ!」などと相槌を打っている先輩ら。
×     ×     ×
自己紹介をしている新入生たち。
新入生「好きな映画は・・・浮き雲です」
サークル長「どっち!?」
新入生「え?ああ、アキカウリスマキのです」
サークル長「カウリスマキの!いいよねー成瀬のもいいけど!」
盛り上がっている先輩陣。
×     ×     ×
自己紹介をしている快。
快「田所快です・・・社会学部で、高校は千葉海星高校です。好きな映画は・・・バックトゥザフューチャーです」
サークル長「よろしくー次」
×     ×     ×
新入生女子が自己紹介している。
新入生女子「好きな映画はハリーポッターです!」
サークル長「わかるぅー!なんだかんだハリポタだよね!」
自分との対応の差に、早くこの場から去りたい気持ちの快。

○ 食堂(日替わり・昼)
昨日とは別のフロアにある食堂だが、券売機には長蛇の列。そして利用しているのは友達同士で食べている学生ばかり。諦める快。

○ 公園(昼)
ベンチに座ってコンビニおにぎりを食べながら、サークル勧誘でもらったチラシを見ている快。

○ アカペラサークルの活動部屋(夕)
発声をしている快。サークル長が新入生を見ている。
先輩「ちゃうちゃう、頭蓋から声出して」
快「頭蓋?」
先輩「今普段のように声出してるよね、それを頭蓋から出すように」
快、意識するも上手くいかない。
快「頭蓋?」
いつのまにか先輩は別の新入生のところへ。
先輩「いいね!君、やってたの?」
新入生「初めてです」
先輩「センスあるね!じゃあさ今頭蓋から意識して声出してるのを、鼻からにしてみて」
早くこの場から去りたい気持ちの快。

○ 公園(日替わり・昼)
ベンチに座って昼食を食べている快。すると離れたベンチで昼食を食べている鬼島を目撃する。
快「!?」
鬼島は快には気づいていない。親近感が湧く快。

○ 地下1階・ホームズの部室前(夕)
入口には「陰謀考察サークル・ホームズ」の表記。
意を決しノックする快。

○ 駅・改札口(日替わり・昼)
快、改札を出て辺りを見渡すと。
山野辺「(快を見つけて)おお!こっち」
そこには鬼島、由貴乃、山野辺が集合している。
快「・・・よろしくお願いします」

○ 都内・あちこちの場所(夜)
謎解きキッドを肩にかけて、リアル脱出ゲームをしている快、鬼島、由貴乃、山野辺。
×     ×     ×
カードに書かれた謎を皆で解いている。
×     ×     ×
楽しそうな姿の快。
×     ×     ×
謎解きをクリアし、盛り上がっている一同。

○ ファミレス(夜)
リアル脱出ゲーム後。ドリンクバーのソフトドリンクで乾杯する快、鬼島、由貴乃、山野辺
×     ×     ×
1時間後。先程までの脱出ゲームの話で盛り上がっている一同。楽しそうな快の姿。
×     ×     ×
1時間後。話もひと段落して。
鬼島「ぼちぼち行くか」
帰り支度をする一同。すると。
快「あの」
一同「?」
快「・・・入部したいです」
一同「・・・」
快「・・・え?」
喜ぶホームズメンバー。
鬼島「よろしく」
快「よろしくお願いします!」

○ ホームズの部室(日替わり・夕)
授業後。部室に入って来る快。
快「おつかれさまです!」
そこには鬼島、由貴乃、山野辺。
×     ×     ×
山野辺「今週持ってきたのは、これです!」
ホワイトボードに「東京地下秘密路線説」と書く山野辺。
×     ×     ×
話し合っている快、鬼島、由貴乃、山野辺。すると。
快「大学にもあるんですかね?」
一同「?」
快「大学の地下にもこういう秘密の道的なもの」
山野辺「あー」
快「通うようになって思ったんですが、千代田区って異様に大学多いですよね」
聞いている鬼島、由貴乃、山野辺。
快「調べてみたら、千代田区が日本で一番大学多いみたいなんです。東京の地下鉄にこんな秘密があったら、もしかしたら大学の地下にも・・・」
山野辺「・・・たしかに!」
由貴乃「一説だと城の跡地に立てられる事が多いから、密集してるみたい」
快「そうなんですね!」
鬼島の様子を伺う由貴乃。
鬼島「・・・」

○ 地下駐車場出入口・守衛室(日替わり・夜)
黒い車が入口前に止まり、カードを提示する運転手。
守衛1「(確認し)どうぞ」
地下駐車場に入って行く黒い車。
守衛1「・・・政治家すか?」
守衛2「は?」
守衛1「黒のレクサスは公用車なんですよね?」
守衛2「全部が全部じゃないでしょ」
守衛1「覗きに行っていいすか?」
守衛2「だめだよ」
守衛1「何か隠してます?」
守衛2「え」
守衛1「もしかしてこの前の話って本当に・・・」
守衛2のスマホが「ピロピロ」と鳴る。
守衛2「(スマホを確認し)ああ!チロ!エアコンのスイッチはダメだって!」
守衛1「え、なんすか?」
守衛1、スマホを覗くと、守衛2の自宅にいる犬のペットモニターの画面。
犬がエアコンの暖房ボタンを押してしまい、部屋の室温が上がったためのお知らせ音だった。
守衛1「え!犬飼ってるんすか!?可愛いっすね!」

○ 教室(日替わり・朝)
授業を受けている快。

○ キャンパス内広場(日替わり・昼)
授業後。快、歩いていると後ろから。
鬼島「快!」
快「あ、鬼島さん」
鬼島「おつかれ」
快「おつかれさまです」
鬼島「昼食った?」
快「いや、まだです」

○ 食堂(昼)
昼休みで混みあっている食堂内。
快「混んでますね」
鬼島「3限は授業?」
快「いや、空きコマです」
鬼島「じゃあ気長に並ぶか」
快「はい」
券売機へ並ぶ快と鬼島。
×     ×     ×
学食を食べている快と鬼島。
快「学食、はじめて食べました」
鬼島「そうなの?」
快「混んでるじゃないですか。それに友達同士の人達ばっかりだから、入りづらくて・・・」
鬼島「そうなんだよな。俺も滅多に来ない。だから誘った」
快「ありがとうございます!」

○ ホームズの部室(日替わり)
快と鬼島、部屋に入ると、そこにはテレビゲームをしている山野辺。
山野辺「おつかれーす」
快「(ゲーム機を見て)何やってるんですか?」
山野辺「これ、おれの私物。部室置いとくからやっていいよ」
鬼島「3限授業じゃなかった?」
山野辺「あーちょっと、めんどくさくなっちゃって」
鬼島「(快に)これ大学生の悪い例」
快「あ、はい・・・」
山野辺「もう人多すぎて、教室行くのだけで疲れますよー」
鬼島「まあこの喧騒も、もう少しだ」
快「そうなんですか?」
鬼島「ゴールデンウィークが明ければ、だいぶ減るから」
快「なんでですか?」
山野辺「5月病と出席取らない授業見極めて、大学来なくなるから」
快「なるほど」
鬼島「でも7月と1月になると試験期間でまた人が増える」
快「へえー」
山野辺「ゴールデンウィーク明けたら、俺も5月の病かかりますわ」
鬼島「快、ゴールデンウィーク空いてる?」
快「え?はい」

○ 高速道路・車内(日替わり・昼)
鬼島の運転でキャンプ場へ向かっているホームズメンバー。

○ 郊外・バーベキュー場(昼)
バーベキューをしているホームズメンバー。
鬼島「これ食べどき」
鬼島、皆に肉を取り分けている。
×     ×     ×
夕。皆で食べている。
快「このあとは謎解きするんですか?」
鬼島「今日はそういうのは無し」
山野辺「快!野菜!焦げてる!」
快「はい!」
由貴乃「山野辺がやりなさいよ」
山野辺「すいやせん」
和気あいあいと食べているホームズメンバー。
×     ×     ×
夜。手持ち花火をしている面々。盛り上がっている。

○ ロッヂ・リビング(夜)
ソファで寝てしまっている快。
テーブルで話している鬼島、由貴乃、山野辺。
目が覚める快。すると会話の内容が入って来る。
鬼島「・・・連絡付かない」
由貴乃「もう半年経ちましたよね・・・」
山野辺「・・・生きてますよね、雄一さん」
快「!?」
寝たふりをし、会話を聞く快。
鬼島「・・・当たり前だろ」
寝たふりを続ける快。

○ キャンパス内広場(日替わり・朝)
ゴールデンウィーク明け。快、歩いていると鬼島と遭遇し。
鬼島「おはよう」
快「お、おはようございます」
鬼島「疲れ取れた?」
快「丸1日寝たので元気です。あ、人、ほんとに減りましたね」
4月に比べ、だいぶ学生が減ったキャンオパス内。
鬼島「でも去年の方が人いなかったな」
快「そうなんですか?」
鬼島「去年花粉凄かったから」
快「え、花粉で変わるんですか?」
鬼島「変わる。大学生は花粉の量で簡単に来なくなる」
快「へえー」
内心はロッヂでの話が気になっている快。

○ ホームズの部室(日替わり・夜)
由貴乃、ホワイトボードに「群馬赤城山麗・徳川埋蔵金」と書く。
×     ×     ×
話し合っている快、鬼島、由貴乃、山野辺。
由貴乃「その総額は20兆円と言われてます」
山野辺「最高じゃないすか!今年の夏合宿で行きましょうよ!ね鬼島さん」
鬼島「いいね」
内心はロッヂでの話が気になっている快。

○ キャンパス内広場(日替わり・昼)
7月。試験期間でキャンパス内は4月並みに人で溢れ返っている。

○ 裏門前(夕)
大学へ向かっているスーツ姿の鬼島。すると黒い車が地下駐車場へ入って行くのを目撃する。
鬼島「!?」

○ ホームズの部室(夕)
鬼島、部室へ入ると突然、電気が付き。
快/由貴乃/山野辺「おめでとうございます!」
クラッカー音。テーブルにはケーキも。
鬼島「!?」
由貴乃「内定おめでとうございます」
山野辺「ジャパンブラッシュって超大手じゃないっすか!」
鬼島「ありがとう」
5限開始のチャイムが鳴る。
快「あ、すいません!僕5限があって・・・」
山野辺「あー、じゃあ快の分のケーキも食べとく!」
由貴乃「山野辺、金払ってないよね」
鬼島「快、わざわざありがとうな」
快「ほんとにおめでとうございます!」
授業へ向かった快。どこか浮かない顔をしている鬼島。
由貴乃「どうかしました?」
鬼島「・・・」

○ 教室(夜)
基礎ゼミの授業後。快、教室を出ようとすると同じクラスのユウヤが皆に向かって。
ユウヤ「今日で基礎ゼミ終わりだし、このあと打ち上げ的なのしようと思ってんだけど、行きませんかー!」
内心行きたくない快。だが言い出せない。

○ 飲食店(夜)
盛り上がっている一同。隅の方で黙々と食べ飲みしている快。
×     ×     ×
ユウヤ「自分の教科書買わせるの、あれ商売してるだろ」
女の子「それ思ったー!」
リク「絶対、印税目当てだよね」
女の子「あるあるある!」
隅では、この気まずさから早く帰りたい気持ちの快。
×     ×     ×
快、1人で食べ飲みしているとユウヤがやってきて。
ユウヤ「楽しんでる?」
快「・・・まあ」
ユウヤ「てかさ、おまえ陰謀サークルみたいなの入ってる?」
快「え?」
ユウヤ「いや、前にあの部室から出てくるとこ見たから」
快「ああ・・・まあ」
ユウヤ「あれ、ヤバサーだろ」
快「ヤバサー?」
ユウヤ「俺の入ってるサークルが部室近くなんだけど、出てくる奴、皆ヤバそうな陰キャだったよ」
快「・・・」
ユウヤ「それになんかあの地下はーとかぶつぶつ言ってて」
リクが近寄って来て。
リク「あのヤバサー!?俺見た時、床にスマホ押し当てて、電波がーとか言っててさ!」
ユウヤ「やば」
リク「先輩が言ってたんだけど行方不明になった奴もいるらしいぜ」
快「え?」
ユウヤ「陰謀とかなんとかであいつらが殺しちゃったりして」
リク「怖すぎるだろ!」
するとひとりの女子がトイレから戻ってくる。
ユウヤ「りなちゃん!おそいー」
ユウヤとリク、すぐさまその女の子のところへ行き、喋りはじめる。聞いた内容に驚いている快。

○ 居酒屋・外(夜)
店から出てくる面々。二次会の招集をし始めるユウヤ。
ユウヤ「二次会、カラオケ行きます!」
リク「行く人挙手!」
手を挙げる面々。
ユウヤ「皆行こう!」
リク「店に電話するね!」
帰ると言い出せず、行く面々の波に巻き込まれてしまう快。

○ カラオケ店(夜)
湘南乃風『睡蓮花』を歌っているユウヤ。ガヤをしている周囲の面々。隅の席で気まずそうに手拍子をしている快。
×     ×     ×
BUMP OF CHICKENの『天体観測』を歌っているリク。横の女子と話しているユウヤ。
時折、スマホで時間を確認する快。
まもなく終電だが、言い出せない。

○ 道(夜)
ダッシュで駅へ向かう快。

○ 駅・ホーム(夜)。
遠ざかっていく電車。終電を逃した快。

○ 裏門前の丘近くの道(夜)
漫画喫茶など朝まで過ごせる場所を探して歩いている快。ふと大学前まで来ると、丘に人影。
快「!?」
見ると、そこにはホームズのメンバーがいる。

○ 裏門前の丘(夜)
山野辺「・・・出てきますかね」
鬼島「・・・」
快、近づいてきて。
快「・・・何してるんですか」
一同「!?」
鬼島「どうした?」
快「終電逃してしまって、どうしようかなと歩いてたら、皆さんを見かけて・・・」
鬼島「そうだったのか」
快「何見てたんですか?」
快の目線は地下駐車場の入口に。
快「・・・何かあるんですか?」
鬼島「・・・」
その時、駐車場から一台の車が出てくる。快と話していて初動が遅れた一同。
必死に追うが、去っていく一台の黒い車。
鬼島「さっきと違う車」
快「え?」
由貴乃「やっぱり別の場所と繋がってる・・・」
快「どういうことですか?」
鬼島「いや・・・」
快「・・・雄一さんと関係があるんですか?」
一同「!?」
鬼島「雄一さんのこと、なんで知ってる?」
快「・・・」

○ ホームズの部室(日替わり・昼)
重苦しい空気の快、鬼島、由貴乃、山野辺。
鬼島「雄一さんは一つ上の先輩で、去年度のホームズ代表だ」
快「!?」
鬼島「最初に地下駐車場に疑問を持ったのは、雄一さんの同級生で・・」

○ 回想/裏門前(10カ月前)
10月。灰谷雄一(22)が歩いていると、守衛室から「雄一!」と呼ぶ声。
見ると、守衛室には警備服を来た同級生・間瀬洋(22)。
雄一「洋!?」

○ 回想/食堂(昼)
学食を食べながら話している雄一と洋。
雄一「半年もやってるんだ」
洋「時給もいいし、あそこの駐車場滅多に使う人いないからラッキーバイト」
雄一「紹介してよ」
洋「おれが最後の1枠だったんだよー」
雄一「何そのマンションの角部屋買えた時みたいな言い方」
洋「それはよくわかんないけど、雄一ってサークル入ってたじゃん?」
雄一「え、うん」
洋「放蕩量産サークルだっけ」
雄一「陰謀考察サークル。面白くないよ」
洋「まあまあまあ。で、陰謀とかを考察してるじゃん?」
雄一「陰謀はそのまま鵜呑みにしてはいけない。ちゃんと自分の中で飲み込んで、考えないとだめだから」
洋「(食い気味に)うちの大学の地下って何かあるの?」
雄一「え?」
洋「いや。特に夜勤で入る時なんだけど、車が通るのよ」
雄一「駐車場だからね」
洋「よーく考えて。そもそも学校が閉まってる深夜にだよ。何で駐車場に車出入りするのって話」
雄一「・・・」

○ 守衛室(日替わり・夜)
地下駐車場へ入って行く黒い車。
それをこっそりスマホで撮影している洋。

○ 食堂(日替わり・昼)
雄一に撮影した動画を見せる洋。
洋「何だと思う?」
雄一「黒い車」
洋「そうじゃなくて」
雄一「確かにこんな深夜に不自然ではある」
洋「だよね?そもそもここの駐車場って、学生も教授も使えないの」
雄一「そうなんだ」
雄一「学生、教授、業者とかは基本的には正門横の地下駐車場で、裏門の方は来賓、あーだから議員や企業OB、あと学祭のゲストで来る芸能人とかしか利用できない」
雄一「へえ」
洋「つまりここはVIP扱いの人じゃないと利用できないの」
雄一「地下通路」
洋「ん?」
雄一「皇室と繋がっていたり、不祥事を犯した要人が雲隠れするために利用すると言われてる秘密の通路」
洋「ここなんじゃね?」
雄一「それは根拠のない都市伝説だから」
洋「だからこの地下に、本当にあるんじゃね?」
雄一「いやいやいや」
洋「でさ、気づいたのよ。確実に車が通る日」
雄一「いつ?」
洋「毎月10日の深夜」


○ 勇名大学・外観(8カ月前)
12月10日。

○ 守衛室(夜)
勤務している洋と守衛2。すると。
守衛2「ちょっと一服して来ていい?」
洋「いいっすよ」
喫煙所へ向かう守衛2。

○ 裏門近くの丘(夜)
ベンチに座り待機している雄一。
すると洋から「今!」のメッセージ。

○ 守衛室(夜)
駐車場入口まで来る雄一。
洋「車通ったら連絡する」
雄一「わかった」
ボタンを押し、入口のバーを上げる洋。
地下駐車場へ向かう雄一。
×     ×     ×
数十分後。入口に1台の黒の車がやってくる。
許可証のカードを提示する運転手。
洋「すいません、ちょっと待ってください、ゲートが・・・」
スマホに雄一へ「車入ってきた」のメッセージを送る。
洋「え、あれ・・・」
時間稼ぎをしている洋。
それに対し、尋常じゃない目つきをしている運転手。
これ以上は限界となり、ゲートを上げる洋。
洋「・・・お待たせいたしました」
地下へ入って行く車。
洋「・・・」

○ 地下駐車場(夜)
急いで身を隠し、様子を伺う雄一。
車が駐車場に入って行く。
雄一「!?」

○ 守衛室(夜)
1時間後。雄一からの連絡はない。気がかりな洋。
先輩守衛、洋の様子が気になり。
守衛2「どうした?」
洋「いや・・・」
硬直している洋。

○ ホームズの部室(夜)
回想が終わり。
鬼島「その数週間後、雄一さんは大学を辞めた」
快「え・・・」
鬼島「正式には大学に退学届のメールが送られてきたらしい」
由貴乃「・・・」
山野辺「・・・」
快「そのあとは・・・」

○ 回想/ホームズの部室(7カ月前)
室内には洋から雄一の話を聞いた鬼島、由貴乃、山野辺。
洋「申し訳ない」
鬼島たちに頭を下げる洋。呆然とする鬼島ら。

○ 守衛室(夜)
勤務中の洋。ふと丘の方を見ると、怪しい人影。
洋「?」
目を凝らすと、鬼島、由貴乃、山野辺が三脚などを立てている様子。

○ 裏門近くの丘(夜)
守衛室からやってくる洋。
洋「何してるの?」
鬼島「調べます。10日は車が来るんですよね?」
洋「これまでの感じだと・・・」
鬼島「待ち伏せます。陰謀論で終わらせたくないので」
洋「・・・」
×     ×     ×
早朝。車が通る事はなかった。
勤務終わりの洋、鬼島たちに駆け寄る。
鬼島M「その後も俺たちは車と遭遇することはなかった。でも・・・」

○ 守衛室(5カ月前・夜)
2月下旬。洋と守衛2が勤務していると、1台の黒の車がやってくる。
洋「!?」
車を地下へ通す守衛2。
洋「・・・」
すると洋、守衛室から飛び出し。
守衛2「おい!?」
車を追いかけて、駐車場内へ入って行く洋。

○ ホームズの部室(昼)
回想が終わり。
鬼島「卒業式の1カ月前、洋さんも退学届のメールを大学に送って、それから今に至るまで連絡が取れない」
言葉が出ない快。

○ 道(夜)
駅へ向かって歩いている快。

○ 教室(日替わり・朝)
試験を受けている快。
だが地下駐車場の話が頭から離れない。

○ 公園(昼)
ベンチに座って昼ご飯を食べている快。
だが地下駐車場の話が頭から離れない。

○ ホームズの部室(日替わり・夕)
鬼島、由貴乃、山野辺、各々が快や地下駐車場のことを考えている。

○ 裏門前・地下駐車場出入口(日替わり・昼)
登校する快。すると地下駐車場入口が目に入る。
快「・・・」
×     ×     ×
快、さりげなく駐車場内へ侵入しようとすると、守衛2に止められ。
守衛2「どうされましたか?」
快「あ、えっと・・・」
守衛2「こちらは車両用のみの出入口となりますので」
快「すいません」
足早に去る快。怪訝そうに快を見ている守衛2。

○ 地下1階(日替わり・昼)
サークルの部室や防音室などがあるフロア。
スマホでWi-Fi検索をすると、謎のWi-Fiアドレスがある。それは地面に近づくほど、電波は強くなる。
快「まじ・・・」
その光景をユウヤとリクと遭遇する。
快「(2人の視線に気づき)あ・・・」
引いた目で見て、立ち去るユウヤとジュン。
快「・・・」

○ 図書館(日替わり・夕)
校舎図面が記載されている本を借りる快。
×     ×     ×
地下2階の図面を見ると、駐車場の隣には謎の空洞がある。不自然さを感じる快。
×     ×     ×
快、図書カウンターで本を貸し出ししようとすると。
司書「この本は貸出できないんですよ」
快「え?」
司書「こちらは禁帯出資料になっておりまして」
快「そうなんですね・・・」
司書「印刷ならできますよ」
司書の目線の先にはコピー機がある。

○ 地理学科窓口(夕)
事務員の男に声をかける快。
快「あの・・・」
事務員男「はい」
快「僕、社会学科の学生なのですが、お聞きしても大丈夫ですか」
事務員男「なんでしょう」
図書館でコピーした図面を見せる快。
×     ×     ×
窓口で事務員と快が話しているのを目撃する山野辺。
山野辺「?」

○ 千代田区・景観(日替わり)

○ 道(夕)
授業後。駅へ向かう快。

○ 駅のホーム(夕)
快、スマホをいじりながら電車を待っていると。
快「え・・・」
SNSのDMにメッセージ。
開くと、そこには快が一人暮らししている自宅へ入って行く姿を盗撮した動画が添付されている。
快「なにこれ・・・」
周囲を見回す快。動悸が激しくなっていく。
すると後ろから肩を叩かれる。
快「!?」
振り向くと、そこには鬼島が。
鬼島「どうした?」

○ 鬼島の部屋(夜)
部屋に入る快。
鬼島「テキトーに座って」
快「・・・ありがとうございます」
台所へ向かう鬼島。座る快。
ふと部屋を見渡すと、コルクボードに雄一がいたときのホームズの集合写真がある。
×     ×     ×
座って話している快と鬼島。
鬼島「窓口で聞いたのか」
快「・・・すいません」
鬼島「いや。でも大学職員なら住所を特定するのは簡単だ」
快「大学内に・・・地下と繋がってる人がいるんですか?」
鬼島「分からない」
快「・・・」
鬼島「快、ホームズを抜けて欲しい」
快「え?」
鬼島「快を危険な目には遭わせたくない」
快「・・・鬼島さんたちは調べ続けるんですか」
鬼島「うん。大事な先輩が巻き込まれてるから」
快「・・・」
鬼島「雄一さん言ってた。陰謀はそのまま鵜呑みにしちゃいけない。自分の中で飲み込んで、ちゃんと考えてこそ、面白さにも自己防衛にもなるって」
快「・・・」
鬼島「陰謀論にしないために、ちゃんと知りたいんだ」
快「・・・」

○ 地理学科窓口(日替わり・朝)
窓口に行く快と鬼島。
立っている女性事務員に声をかける。
快「すいません」
事務員女「はい」
快「あのー、この前こちらで、男性で小柄な60代くらい?の方に、あ僕社会学科なのですが、授業で聞きたいことがあって、それで聞いたらすごく良く対応して下さって、そのお礼を言いたくて・・・」
事務員女「えー・・あ小杉さんかな?今体調崩して休職中なんです」
快「え?」
鬼島「・・・」

○ キャンパス内広場(朝)
歩いている快と鬼島。
快「・・・決めました」
鬼島「え」

○ ホームズの部室(朝)
快と鬼島、部屋に入ると、そこには由貴乃と山野辺。
山野辺「おおぉ!?」
由貴乃「快・・・久しぶり」
快「お久しぶりです」
×     ×     ×
由貴乃と山野辺に、快が狙われた事を伝えた鬼島。
山野辺「・・・まじすか」
由貴乃「大学職員の中にも地下と繋がる人がいるということですか」
鬼島「分からない。でもあの地下には何かある」
山野辺「でも入口は守衛に止められるし、そもそもゲートが下がった状態で人がくぐればセンサーが反応して、警報が鳴る」
快「そうなんですか?」
山野辺「5回挑戦した」
快「多い・・・」
由貴乃「校内から駐車場へ入る扉は、セキュリティカードがないと開かない」
快「校内から入る扉・・・」
由貴乃「でも警備員さんが見回りで使用してるカードでも、そこは開かないみたい。そもそも開ける機会がないからだろうけど」
快「徹底してますね」
鬼島「・・・おそらくだが、1つ可能性がある」
一同「?」

○ キャンパス内広場(日替わり・昼)
8月。夏休み期間で学生はまばらだ。

○ 学園祭実行委員の活動部屋(日替わり・昼)
約100人の生徒がびっしりと座り、学園祭実行委員のミーティングが行われれようとしている。
一番後ろの席で見学をしている快。
×     ×     ×
代表が壇上に立つと、一気に締まる空気感。それに驚く快。
代表「では勇名祭ミーティングをはじめます」

○ 回想/ホームズの部室(夕)
話している快、鬼島、由貴乃、山野辺。
由貴乃「・・・学園祭実行委員」
鬼島「学園祭は毎年、芸能人がゲストで来る。そのゲストの送迎車は地下2階の駐車場に停まる」
山野辺「毎年豪華っすよね。あれは地下駐じゃないとだめですわ」
鬼島「あの日だけは、出迎えで実行委員も駐車場に入れる」
山野辺「誰か実行委員に知り合いいます?」
一同「・・・」
由貴乃「コミュニティ狭くてごめんなさい」
山野辺「由貴乃さんだけじゃないっすよ!皆そうですから!」
鬼島「今から入部するわけにもだよな・・・」
山野辺「それは不審すぎますね」
快「・・・僕ならどうですか」
快を見る一同。

○ 学園祭実行委員の教室(夜)
回想が終わり。
ミーティング後。代表と面談をしている快。
代表「行事運営の経験はある?」
快「ないです」
代表「どうしてこのタイミングで入ろうと思ったの?」
快「・・・えっと」
快からの言葉を待っている代表。
快「僕・・・」

○ ホームズの部室(日替わり・夜)
入って来る快。
鬼島「どうだった?」
快「・・・入部」
一同「・・・」
快「できました」
歓喜するホームズメンバー。

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(日替わり・夜)
快の実行委員としての活動初日。代表と話している。
代表「今日からよろしくね」
快「お願いします!」
代表「快は企画部の希望だよね?」
快「はい!企画部がやりたいです!」

○ 回想/ホームズの部室(数日前・夜)
学園祭実行委員のHPを見ている快、鬼島、由貴乃。
鬼島「企画、総務、広報の3つに分かれてる」
由貴乃「芸能人のトークショー担当は企画部ですね」
快「そこに入ればいいんですね」
鬼島「いや、その中でも当日のゲストをアテンドする人はさらに限られてくる」
快「激戦ですね・・・」

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(日替わり・夜)
実行委員たち、各ポジションごとで作業をしていると。
企画部長「代表!押さえられました!」
代表「!?」
企画部長のところへ駆け寄る代表。
快「?」
すると同じ企画部の2年・間瀬さくら(19)が
さくら「(快に)今年のトークショーのゲストだね」
快「!?」

○ ホームズの部室(日替わり・昼)
話している快、鬼島、由貴乃、山野辺。
快「えっと・・・俳優の来栖ラスク?」
由貴乃「来栖ラスク!?」
山野辺「誰?そいつ有名なんすか」
由貴乃「(山野辺に)おまえ飛ばしてやろうか」
山野辺「え?・・・すいません」
快「僕も芸能人疎くて・・・」
鬼島「由貴乃ちゃん、詳しいの?」
由貴乃「・・・私、大ファンです」
鬼島「・・・見えた」
快「え?」

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(夜)
ワイヤレスイヤホンをしている快。(髪の長さでイヤホンは隠れている)
イヤホンからはホームズの部室の声が聞こえている。
快「(小声)大丈夫ですか?」
鬼島(声)「聞こえてるよ」

○ ホームズの部室(夜)
鬼島のスマホから、快の声が聞こえている。
それをスピーカーフォンで聞いている由貴乃と山野辺。
鬼島「(快に)勇名祭まで約2ヶ月。おそらくここから、より細かなポジションに分担して作業が行われるだろう」

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(夜)
鬼島たちの声を聞いている快。
鬼島(声)「来栖のアテンドに付くのは、実行委員の経験値も大事だと思うが、それに勝るのは来栖への想い。そこで由貴乃」
由貴乃(声)「任せて。快はこれから、さりげなくラックンへの想いを事あるごとに役職陣に差し込んで」

○ ホームズの部室(夜)
山野辺「ラックンって呼ばれてるんだ・・・」
由貴乃「(快に)私が適宜、その場に適切なラックンへの想いを伝えるから、快はそれを発してほしい。想いが伝わればアテンドのポジションに付けるはず」
快「(声)了解しました」
鬼島「(快に)・・・ごめん、こんな負担をさせてしまって」

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(夜)
快「(小声)いえ、僕が名乗り出たことです。雄一さん助けましょう」

○ 勇名大学・外観(日替わり・朝)

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(朝)
企画部がトークショーの内容について話し合いをしている。
企画部長「どっから掘り下げるからだよねー。来栖さんっていつから芸能活動やってるの?」
PCやスマホなどで調べ始める一同。すると
快「デビューが2010年のドラマ、『優等生、進学校に入学する』主人公の小学生時代の役です」
企画部長「ああー!再放送で見たことあるかも!え、じゃあ15年もやってるんだ」
企画部員1「そしたらもう少し搔い摘んだ時期からの方が、いいですよねー。転機になった作品とかですか?」
企画部長「来栖さんってどの作品でぼかーんってブレイクしたの?」
考えている一同。即座にイヤホンから。
由貴乃(声)「世間的にはドラマ『ミスターX』で一躍知名度を上げましたが、本人としては映画『ハーフマラソン』での茂野監督との出会いが転機と述べています」
由貴乃の言葉を復唱する快。
快「世間的にはドラマ『ミスターX』で一躍知名度を上げましたが、本人としては映画『ハーフマラソン』での茂野監督との出会いが転機と述べています」
企画部長「快くん、すごいね」
快「僕、大ファンで・・・」

○ ホームズの部室(朝)
快が答えられない質問を全て答えて、
山野辺「・・・すげー」

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(朝)
話し合い後。さくら、快の元へ来て。
さくら「来栖ラスク好きなの?」
快「あ、まあ・・・」
さくら「かっこいいよね。私この前の舞台見に行ったよ」
快「え、ほんとですか」
由貴乃(声)「(快に)私、地方も含めて5回見に行きました」
復唱を促す由貴乃。
快「・・・」

○ ホームズの部室(朝)
スマホ越しに快に伝えている由貴乃。
由貴乃「(快に)私、地方も含めて5回見に行きました」
山野辺「ファン同士のマウントの取り合いやめて下さいよー」
鬼島「ごめん、ここで俺抜ける。由貴乃ちゃんあと任せていい?」
由貴乃「はい」
山野辺「え、なんかあるんですか?」
鬼島「このあと内定式」

○ 都内某ホテル・大ホール(昼)
株式会社ジャパンブラッシュの内定式が行われている。その中に鬼島。
×     ×     ×
内定者の自己紹介が行われている。
×     ×     ×
自身の順番が来て、緊張の面持ちの鬼島。
鬼島「鬼島信人と申します。勇名大学法学部に在学していて・・・」
×     ×     ×
懇談会の食事中。同じテーブルの同期・矢島が鬼島に話しかける。
矢島「勇名ですよね?僕、勇名の経営学部です。矢島って言います」
鬼島「あ、法学部の鬼島です」
矢島「鬼島と矢島で似てる!てかキャンパスも同じだから、絶対どっかですれ違ってますよね!」
鬼島「・・・そうかもですね」
すると司会がマイクの電源を付け。
司会「ここでジャパンフラッシュ横溝隆会長より、お祝いのメッセージビデオが届いております」
会長・横溝隆(85)のビデオメッセージが流れる。
矢島「会長って勇名のOBですよね」
鬼島「そうなんですね」
横溝(映像)「26年度新入社員の皆さんこんにちは。本日は伺えず、このような形での挨拶で申し訳ない・・・」
新卒社員への挨拶を述べている横溝。
鬼島「・・・」

○ 千代田区内・車内(昼)
同時刻。後部座席に座っている横溝と秘書。
いつもより混んでいる道路。それに苛立っている横溝。
秘書「本日開催の神保町さわやか秋祭り2025の影響みたいです」
横溝「地下道、使え」
秘書「はい。日東大の地下駐車場から」
運転手「かしこまりました」
進路変更をする車。

○ 千代田区内・日東大学・地下駐車場入口(昼)
横溝が乗る車が地下駐車場に入って行く。

○ ホームズの部室(日替わり・昼)
カメラ内蔵メガネを付けている快。
山野辺「すげー!」
快の目線の映像がPCに映っている。それを見ている鬼島、由貴乃、山野辺。
鬼島「これでアテンドポジションの快の目線がPCに映る」
由貴乃「地下駐車場までの導線をチェックできますね」
普段付けてるメガネと内蔵カメラを入れ替える鬼島。
鬼島「そして無事、俺が地下へ潜入したら、このカメラで地下の様子を記録する」

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(日替わり・夕)
ラスクの控室の場所を決めている企画部員たち。
その中にカメラ内蔵メガネを付けている快。
企画部長「じゃあ控室はここで決まりね」
企画部員1「すいません、今ネット調べたんですけど、来栖さん喫煙者かもです」
企画部長「そうなの?そしたらすぐ外に出れる部屋の方がいいか」
企画部員1「裏だと結構細かいことでケチ付けてくる人らしいです」
企画部長「へえー、テレビの印象とは違うね」
さくら「吸ってないと思いますよ」
一同「!?」
さくら「何を見て言ってるんですか?」
PCを操作しながら、企画部員1が。
企画部員1「ネットの目撃談とかで書かれてるけど」
さくら「たぶんそれアンチの捏造ですね。印象悪くさせようとして」
由貴乃(声)「そうそうネットの声、簡単に鵜呑みするな」
さくら「実際の現場見てないですよね?なんで言い切れるんですか」
企画部員1「言い切ってはないけど・・・」
企画部長「快はどう思う?」
快に視線が集まる。
快「・・・」
するとイヤホンから。
由貴乃(声)「吸ってない吸ってない吸ってない」
由貴乃の圧に負けそうになるが。
快「・・・吸ってる、吸ってないというより、どちらとも対応できるように準備すればいいんじゃないでしょうか?」
企画部長「そうだね。そうしよう」
ホッとする快。
鬼島(声)「快、ナイス対応」
×     ×     ×
会議後。さくらが快の元へ駆け寄って来て。
さくら「ありがとう」
快「あ、いえ」
さくら「ファンの願望で感情的になった」
快「好きな人の事ネットの声だけで判断されたら、ああなる気持ちわかります」
さくら「ありがと。あ、メガネ」
快「え・・・ああ・・・イメチェンしてみました」
さくら「似合ってる」
快「あ、ありがとうございます」

○ キャンパス内広場(日替わり・朝)
ステージの設営作業がはじまる。
×     ×     ×
昼。出店やテントが並び始めている。
×     ×     ×
夕。装飾物などが飾り付けられ、華やかになっていく。
×     ×     ×
夜。ステージが出来上がる。

○ 学園祭実行委員の活動ルーム(夜)
前日作業が終わり、集合している実行委員たち。
代表「今年は特にいいチームだと思っています!まずは自分たちが楽しんで、最高の祭りにしましょう!」
盛り上がる一同。

○ 裏門(夜)
校舎から出てくる快とさくら。
さくら「色々ありがと。快のおかげで何度も助けられてる」
快「いやいや、僕こそさくらさんにめちゃくちゃ助けられてます」
さくら「あのさ、軽くお茶して・・・」
快「え!?」
丘を見るとホームズのメンバーがいる。
さくら「知り合い?」
快「あ、僕、サークルと掛持ちしてまして、そのメンバーです」
さくら「そうなんだね。何サークル?」
快「ホームズっていう、・・・陰謀考察サークルです」
さくら「え・・・そうなの?」
快「はい・・あ、おつかれさまでした!明日よろしくお願いします!」
ホームズメンバーの所へ向かう快。
楽しそうな快の姿。その姿を見ているさくら。

○ 勇名大学・外観(日替わり・朝)
11月10日。
学園祭当日。賑やかなキャンパス。

○ ホームズの部室(朝) 
カメラ内蔵メガネを装着し、起動させる鬼島。
×     ×     ×
カメラからの音声と映像がPCに映っているかを確認する由貴乃。

○ 裏門前の丘(朝)
三脚を立てて、駐車場入口を撮影し始める山野辺。

○ 特設ステージ(朝)
準備している学園祭実行委員ら。その中に快の姿も。するとイヤホンから鬼島の声が。
鬼島(声)「快、聞こえる?」
快「(小声で)はい」
鬼島(声)「快は実行委員としての仕事を楽しめばいいだけだから。こっちは任せろ」
快「(小声で)はい」
鬼島(声)「巻き込んですまない」
快「鬼島さん、僕、自分の意思でやってます」
鬼島(声)「そうだったな」
快「むしろ感謝してます。ホームズ入ってなかったら、何もせずに、誰ともかかわらずに大学生活過ごしてたと思うので」

○ 実行委員、企画部の拠点部屋(昼)
来栖が来た際の各ポジションの確認をしている企画部メンバー。すると代表が現れて。
代表「来栖さん、まもなく到着する」
企画部長「了解。行こう」
移動する来栖アテンドメンバー。その中に快。

○ 裏門前の丘(昼)
山野辺、黒のアルファードが駐車場入口に向かうのを確認し。
山野辺「車来ました!おそらく来栖です!」

○ ホームズの部室(昼)
鬼島と由貴乃が待機している。
由貴乃「山野辺、ありがとう」
PCで快目線からの地下駐車場までの道程をカメラ映像で見ている鬼島と由貴乃。

○ 校舎内地下2階(昼)
扉に到着した快と実行委員のメンバー。
代表がセキュリティカードで入口を開けると。
快「!?」

○ 地下駐車場(昼)
入口から駐車場内へ侵入した快と実行委員アテンドメンバー。
初めて見る駐車場内に驚いている快。
すると黒いアルファードが近づいてくる。
緊張感が走る実行委員たち。そして車が止まり、車内から来栖ラスク(26)とマネージャーが出てくる。
ラスク「よろしくお願いします!」

○ 地下駐車場~来栖の控室までの道中(昼)
控室までラスクとマネージャーをアテンドしている快と実行委員たち、

○ ホームズの部屋(昼)
快目線のカメラからの地下駐車場~控室までの道程をPCで見ている鬼島、由貴乃、山野辺。
鬼島「よし、シミュレーションしよう」
由貴乃/山野辺「はい」

○ 控室(昼)
ラスクに今日のスケジュール説明をしている企画部長。その後ろに快とさくらもいる。
×     ×     ×
企画部長「以上がスケジュールとなっております」
ラスク「ありがとうございます」
企画部長「あ、トークショー後は一旦控室戻られます?」
マネージャー「すいません、この後スケジュールあってそのまま飛び出しで」
企画部長「お忙しい中ありがとうございます」
ラスク「いやいや今だけです」
企画部長「あ、お手洗いは部屋を出た左手奥に、喫煙スペースはこちらを・・・」
マネージャー「大丈夫ですよ」
企画部長「え?」
来栖「僕吸わないので大丈夫です」
企画部長「あ、かしこまりました」
嬉しそうなさくらの顔。それを見ている快。

○ ホームズの部室(昼)
快目線のカメラ映像を通して、控室の様子を見ている鬼島、由貴乃、山野辺。来栖が非喫煙者だと分かり。
由貴乃「ほら」
嬉しそうな由貴乃の顔。
鬼島/山野辺「・・・」

○ 舞台裏(昼)
待機しているラスク。その横には快ら企画委員たち。

○ 特設ステージ(昼)
ラスクの登場を待ちわびている大勢の観客。そして。
司会「では本日のゲスト!俳優の来栖ラスクさんです!」

○ 舞台裏(昼)
快「(ラスクに)お願いします」
快の合図でステージへ行くラスク。
ラスクの登場で大盛り上がりの観客。

○ ホームズの部室(昼)
ラスクの登場に、まるで現地にいるかのように大喜びをする由貴乃。
山野辺「・・・シミュレーションしましょう」
鬼島「そうだな」

○ 特設ステージ(昼)
トークをしているラスク。
×     ×     ×
学生からの質問コーナーに答えているラスク
×     ×     ×
アコースティックの弾き語りをしているラスク。

○ ホームズの部室(昼)
快目線の映像をPCで見ている由貴乃、山野辺。
山野辺「・・・弾き語りのコーナー要ります?」
由貴乃「うるさい」
集中モードに入っている鬼島。

○ 舞台袖(昼)
ラスクのパフォーマンスを袖から見ている快。弾き語りが終わると。
快「(ホームズに)間もなくです」

○ ホームズの部室(昼)
準備を整えた鬼島。見守る由貴乃と山野辺。
鬼島「行ってくる」


○ 特設ステージ(昼)
司会「本日のゲスト、来栖ラスクさんでした!」
拍手する観客。袖にハケるラスク。

○ 舞台袖~地下駐車場までの道(昼)
移動するラスクとマネージャー、そして実行委員たち。
×     ×     ×
ラスクを追いかける学生たち。かなりの数だ。
×     ×     ×
予想以上の群衆でラスクの所まで行けない鬼島。

○ ホームズの部室(昼)
鬼島目線のカメラ映像を見ている由貴乃と山野辺。
由貴乃「(群衆のごった返しに)やばい・・・」
山野辺「・・・フォロー行ってきます!」
部屋を飛び出す山野辺。

○ キャンパス内~地下駐車場への道(昼)
ラスクを駐車場まで誘導している実行委員たち。
だが付いてくる学生たちで中々進めない。
代表「すいません!通してください!」
「危険ですので離れて下さい!」などの声掛けをする快、さくらなどのアテンドメンバー。
×     ×     ×
少しずつ近づいている鬼島だが、このままだと追いつけない。
鬼島「・・・」
その時、山野辺が合流し。
山野辺「はい通してください!撮影はご遠慮下さい!」
などと声掛けをし、鬼島をアテンドする山野辺。
あまりの堂々さに、野次馬たちからは「ラスクさんのマネージャー?」、「事務所の人?」などの声。
その甲斐あって、ラスクと距離が近づく鬼島。

○ ホームズの部室(昼)
映像でそれを見ている由貴乃。
由貴乃「ナイス、山野辺!」

○ 校舎内~地下駐車場までの道中(昼)
駐車場を目指すラスクと実行委員たち。
企画部長「非常階段までの辛抱ですので」
ラスク「ありがとうございます」
すると快の視界に鬼島が見える。
快「!?」
細い廊下の一本道に入り、まもなく非常階段の扉に近づく。
快「僕止めてきます」
企画部長「快、頼んだ」
両手を目一杯広げ、群衆を止める快。
快「危ないですので、ご遠慮ください!」
野次馬を必死に止めていると、遂に鬼島と山野辺がやってくる。
山野辺「頼んだ!」
快「はい!」
快、鬼島を通し、非常階段に潜入。扉が閉まる。

○ 非常階段~地下駐車場へ向かう道中
ラスクたちの元へ合流する快。
距離を保って、尾行している鬼島。
×     ×     ×
扉前に到着するラスクたち。
代表がセキュリティカードで入口を開ける。すると
快「抑えます」
扉開けの補助をする快。
駐車場内へ入るラスクと実行委員たち。
鬼島が来るまであと20メートル。

○ 地下駐車場(昼)
車まで向かうラスク、マネージャーと実行委員たち。
未だ扉を開けている快。すると代表が振り向き。
代表「快、閉めていいよ」
快「・・・はい」
閉めるまで快を見ている代表。
快「・・・」
その時何かに足を引っかけたのか、さくらが転倒する。
一同「!?」
さくらに目が向く一同。快、チャンスだと思い。
快「鬼島さん!」
その隙に駐車場内に駆け込む鬼島。すぐさま死角になる場所に隠れる。
それを確認し、安心する快。

○ ホームズの部室(昼)
一連をPCで見ていた由貴乃と山野辺。
鬼島(声)「・・・潜入成功」
山野辺「さくらさん、ナイス!」
由貴乃「あざとい・・・でもナイス」

○ 地下駐車場(昼)
転倒したさくらを気遣うラスク。
ラスク「大丈夫ですか?」
さくら「すいません!ありがとうございます!」
×     ×     ×
見送りをしている実行委員たち。
ラスク「ありがとうございました!」
車に乗るラスクとマネージャー。
発車し出口へ向かう車。見送る実行委員たち。
代表「(車が見えなくなり)素敵な人だったね。行こう」
持ち場へ戻る実行委員たち。鬼島が気になる快。

○ キャンパス内広場(夕)
学園祭1日目終了。片付けなどをしている学生たち。

○ 大教室(夜)
学園祭実行委員が集まって、代表の話を聞いている。
代表「1日目お疲れさまでした!皆様のおかげで大きなトラブルもなく終えることが出来ました!」
代表の話を聞いているが、内心は鬼島の事が気になって仕方ない快。そんな快を見ているさくら。

○ 地下駐車場(夜)
身をかがめている鬼島。

○ ホームズの部室(夜)
実行委員の仕事を終えて戻って来た快。
快「どうですか?」
電波が悪いのか、鬼島のカメラからの映像はPCにうまく表示されていない。
由貴乃「地下だからなのか、電波が・・・」
鬼島(声)「声は?」
由貴乃「(鬼島に)音声はなんとか」
大学閉館30分前のチャイムが鳴る。
快/由貴乃/山野辺「・・・」

○ 裏門前の丘(夜)
駐車場入口を見ながら待機している快、由貴乃、山野辺。
山野辺「快、大丈夫?明日も実行委員の仕事あるだろ?」
快「大丈夫です。自分で決めてやってることですから」
するとPCの音声から鬼島が。
鬼島(声)「皆ほんと帰っていいよ。カメラで地下の様子は録画されてるから」
由貴乃「(鬼島に)先輩を置いて先には帰れません」
山野辺「1つ上の先輩がそういうなら俺も帰りません」
快「僕は元々帰る気ないです」
山野辺「快っ!そこは合わせろよ!」
鬼島(声)「ほらーこういう流れになるから」
×     ×     ×
数時間後。丘で横になってしまっている山野辺が。
山野辺「(目覚めて)あ!?すいませんっ」
鬼島(声)「もうみんな帰りなって」
由貴乃「終電ないです」
鬼島(声)「もうそんな時間か・・・」
山野辺「これ終わったら、うまいもの食べにいきましょ!」
快「いいですね!」
由貴乃「(鬼島に)リクエストありますか?」
鬼島(声)「えー、なんだろうな・・・待って・・・今のところ、3つ候補があって・・・」
その時、一台の黒い車が守衛室前で止まる。
由貴乃「(鬼島に)車来ました」
鬼島(声)「え!?」
山野辺「(鬼島に)先輩、気を付けて下さい!」
鬼島(声)「おう、あ、食べたいもの、あったかいそば!」
快「(鬼島に)食べ行きましょう!」

○ 地下駐車場(夜)
身を潜めている鬼島。
車が地下に侵入してきて、奥の扉前で止まる。
運転手が車から出てきて、カードとパスワードを入力すると、扉が開く。
鬼島「!?」
だが車は先へ進まない。
すると車から降りて来るスーツ姿の人物。
鬼島「?」
その人物は鬼島の方へ近づいてくる。
鬼島「・・・」

○ 裏門近くの丘(夜)
数分経つが、鬼島からの応答がない。
由貴乃「(鬼島に)鬼島さん・・・鬼島さん!」
山野辺「え・・え、これやばいんじゃないすか!?」
快「・・・行きましょう」
駐車場入口へ走る快、由貴乃、山野辺。

○ 守衛室(夜)
快たち、ゲートをくぐろうとすると。
守衛2「何してんだ!?」
守衛2が出てきて、快たちを止める。
快「通してください!」
由貴乃「中に友人がいるんです!」
守衛2「ここは特定の車両以外は入構禁止です!」
すると突然入口のゲートバーが上がる。
一同「!?」
守衛1が手動でゲートバーのボタンを押したためだ。
守衛1「行ってください!」
守衛2「おまっ!?何やってん・・・」
守衛2を振り切り、地下駐車場へ走る快、由貴乃、山野辺、守衛1。それを追いかける守衛2。

○ 地下駐車場(夜)
到着する快たち。
快「鬼島さん!」
由貴乃「いない・・・」
辺りを探す一同。
×     ×     ×
すると奥に高さ3mほどの分厚いセキュリティ扉を発見する。扉前に行き。
由貴乃「(扉を触ると)熱い・・・」
山野辺「(扉を叩き)鬼島さん!」
快「・・・」
守衛2「(快らに)戻って下さい!」
守衛1「本当だったんじゃないすか!前の守衛もこの扉探ったら、いなくなったんですよね!?」
由貴乃「それって雄一さんと同級生の・・・」
狼狽えている守衛2。
その時、快のスマホに通知。
快「!?」
見ると、鬼島から「ごめん、心配かけた!」のメッセージ。すぐさま「どこいるんですか?」のメッセージを送る快。だが既読は付くが、返信が無い。
由貴乃「・・・おかしい」
すぐさま鬼島に電話する快。
スピーカーフォンにし、発信音が鳴り響く。
由貴乃「出て出て・・・」
すると電話に出る鬼島。
快「鬼島さん!?」
鬼島(声)「ごめん」
快「どこいるんですか!?」
鬼島(声)「うん・・・まあとりあえず無事ではあるから。終わったら、ちゃんと話すから」
快「大丈夫ですか・・・」
鬼島(声)「うん。ありがとう。ごめん、切らなきゃだわ。じゃあ・・」
電話が切れる。
由貴乃「・・・雄一さんの時と同じ」
山野辺「どうなってんだよ・・・」
守衛2「ご本人が無事と言ってるんだから、いいよね?」
快「・・・」
立ち尽くすしかない面々。

○ 東京・景観(日替わり)
日の出。

○ 鬼島のアパート(朝)
快、鬼島の部屋の前に行くと、不審そうに見てる大家。
快「あ、すいません、ここに住んでた方って・・・」
大家「引っ越したよ」
快「え?」
大家「室内に残ってるモノは業者を呼ぶので全て処分しますって」
快「・・・」
大家「早朝に突然連絡きて。さっきよ、なんかあったのかね」

○ キャンパス内広場(夕)
学園祭終了。撤去作業が行われている。
その中に心ここにあらずで作業をしている快の姿。

○ ホームズの部室(夜)
室内に入る快。そこには由貴乃と山野辺。
×     ×     ×
鬼島について話している快、由貴乃、山野辺。
由貴乃「・・・連絡も出ない」
山野辺「学祭期間で大学窓口は閉まってるから、確認できるのは週明けにならないと・・・」
由貴乃「でもおそらく雄一さんのときと同じように・・・」
快「・・・」
山野辺「・・・もうやめましょう」
由貴乃「何を?」
山野辺「いや、その・・・こういったことを探るのは」
由貴乃「え鬼島さんは?雄一さんは?」
山野辺「でも・・・もう僕らの命すらやばいレベルですよこれ。それに僕ら何かできます!?」
快「・・・・・このままだと・・陰謀論で終わりですよ」
由貴乃「・・・」
山野辺「・・・」
快「このサークルは陰謀論や都市伝説とか噂話を、皆で考えるサークルじゃないんですか。昨日はいた先輩がいなくなってるんですよ。ここで調べないでどうするんですか」
山野辺「・・・あくまでもサークルだろ」
快「え・・・」
言い返さない由貴乃。
快「・・・」

○ 道(夜)
駅へ向かって歩いている快。スマホに通知音。見ると、
さくらから「学祭おつかれ!週末空いてる?」のメッセージ。驚いている快。

○ 都内・某駅・改札口(日替わり・朝)
待ち合わせをしている山野辺。そこへやってくるマスク姿の女性。
女性「健さんですか?」
山野辺「はい、あ、Aさん?」
女性「Aです」
山野辺「あの・・・」
女性、持っていた紙袋を山野辺に渡す。
女性「またお願いします」
立ち去る女性。立ち尽くす山野辺。

○ 公園(朝)
ベンチに座って、女性から貰った袋を覗く山野辺。その中には札束が。
山野辺「・・・」
山野辺、スマホのフォルダからいくつかの動画や写真を削除している。
その内の一つは「快が自宅へ入ろうとする動画」。

○ カフェ(昼)
座っている快とさくら。
さくら「話したいことあって」
快「はい」
さくら「えっと・・・」
緊張の面持ちの快。
さくら「・・・気づいてるかもしれないけど」
快「え、え・・・」
さくら「わたし・・・妹なの。間瀬洋の」
快「ん?すいません、えっと・・・」
さくら「ごめん、順序間違えたかも」
快「あ!間瀬洋って、もしかして灰谷雄一さんと同級生だった?」
さくら「・・・やっぱり快くんは知ってたね」
快「ホームズ入部した少しあとに、雄一さんのことを知って。その時に洋さんのことも・・・」
さくら「わたしもお兄ちゃんから、あの地下のことは聞いてて」
快「そうだったんですね・・・お兄さんって・・・」
さくら「うん・・・今も音信不通」
快「・・・」
さくら「あと1カ月で卒業だったのに、突然大学辞めて」
快「・・・」
さくら「学園祭の日、快くんのサークル、何かしてたよね?」
快「・・・はい。あの地下に侵入するために僕は実行委員になりました。僕が誘導して、代表の鬼島さんが駐車場に残りました。でも鬼島さんも・・・」
さくら「・・・お兄ちゃんと同じ?」
快「はい・・・」
さくら「なんでみんな大学辞めるの・・・笑っちゃう」
快「・・・」
さくら「・・・一緒に調べさせて」
快「え?」
さくらの決意を感じる快。

○ 乗船口(日替わり・朝)
並んでいる乗客達。その中に見覚えのある後ろ姿。

○ フェリー船内(朝)
「神津島行き~」のアナウンス。そこには鬼島。手には地下駐車場侵入の際にかけていたカメラ内蔵メガネ。

○ 千代田区・景観(夜)

○ 千代田区内の道路・車内(日替わり・夜)
後部座席には横溝と秘書。
横溝「またウチの学生が探ったんだって?」
秘書「みたいです」
横溝「恐ろしいね」
秘書「はい」

○ 地下駐車場入口(夜)
横溝の乗る車が地下駐車場に入ろうとすると、目の前に人が!?急停車する車。そこには快が立っている。
横溝「!?」
運転手、サイドウィンドウを開けて。
運転手「危ねえだろ」
快、車に近づいて。
快「地下に何があるんですか!」
守衛3がやってきて。
守衛3「やめなさい!」
快を制止させる守衛3。車に向かって叫ぶ快。
快「友達がいなくなってるんです!もう少しで卒業だったのに、就職決まってるのに、大学辞めたんです!・・おおあぁおい!」
地下へ入って行く車。

○ 車内(夜)
地下駐車場へ向かう車内。険しい表情の横溝。

○ 地下駐車場出入口(夜)
地下へ入って行く車を見ている快。
その目には、信念と狂気が混在している。
タイトル『大学の地下に何かある』
おわり

「大学の地下に何かある」(PDFファイル:776.80 KB)
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