XenoMessiaN 第6界 スコシズツ SF

東京の街に突如出現した凶悪な罪獣バビロンに立ち向かった巨人の正体は愛に飢えた青年だった。 皆が憧れるヒーローのように活躍すればまだ知らぬ愛を得られると意気込み奮闘するのだが…… これは現実から目を背けながらも一方的に他者からの愛を待ち続ける者たちの物語。
甲斐てつろう 39 0 0 08/17
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第一稿

【主な登場人物】
創快:主人公の高校生
瀬川抗矢:快の友人
与方愛里:快のクラスメイト
河島咲希:愛里の友人
横山純希:バイト先で再会した苛めっ子
創美宇:快の姉
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【主な登場人物】
創快:主人公の高校生
瀬川抗矢:快の友人
与方愛里:快のクラスメイト
河島咲希:愛里の友人
横山純希:バイト先で再会した苛めっ子
創美宇:快の姉
名倉雄介:Connect ONE実働部隊隊長
陽・ドゥブジー:Connect ONE実働部隊隊員
早川竜司:Connect ONE実働部隊隊員
茜蘭子:Connect ONE実働部隊隊員
新生継一:Connect ONE長官
時止救:Connect ONE技術主任
田崎茂光:Connect ONE参謀
瀬川公:Connect ONE参謀
小林:Connect ONE職員
ルシフェル:謎の男、罪獣のような姿に
ゼノメサイア:快が変身した巨人

その他



○高円寺 街中
  陽・ドゥブジー(26)、紺色の戦闘機である
  ウィング・クロウを飛ばしルシフェルを砲
  撃する。
陽「遅ぇんだよ!」
  攻撃が命中後、サングラスの位置を直し笑
  った。
陽「どうだ撃たれる側になった気分は?」
  ウィング・クロウ、陽の操縦で空中で華麗
  なターンを決めた。
  早川竜司(25)、大きなバギーのような車体
  を持つライド・スネークを走らせる。
  大きな車輪で瓦礫も簡単に飛び越えた。
竜司「ライド・スネーク出陣!」
  竜司、棒キャンディを咥えながら走る。
  しかしルシフェル、火球を放つ。
竜司「蘭子ちゃん、アンチ・グラビティだ!」
  竜司、オペレーターの茜蘭子(24)を呼ぶ。
蘭子「分かってるっつーの!」
  蘭子、上空に聳える母艦キャリー・マザー
  から遠隔操作しライド・スネークに変化を
  もたらす。
  ライド・スネーク、車輪が横を向き壁など
  も自由に走れるようになった。
  壁を走りルシフェルの火球を避ける。
竜司「ひゃっほー!」
  ライド・スネーク、ルシフェルに近付き散
  弾を命中させた。
竜司「ふぅー! 絶好調だぜ!」
蘭子「調子乗るな!」
  蘭子、一呼吸おいてドーナツを食べる。
  竜司、尚も調子に乗り車体を飛ばす。
竜司「そろそろトドメ……あっ」
  ライド・スネーク、横の壁にぶつかり横転
  してしまう。
蘭子「ホラ言わんこっちゃない!」
  ルシフェル、ライド・スネークが立て直す
  までに火球をぶつけようとする。
  名倉雄介(30)、巨大な戦車であるタンク・
  タイタンから多連装ミサイルを発射する。
名倉「多連装ミサイル発射!」
  大量のミサイルは火球を放とうとするルシ
  フェルに直撃し行動を阻止した。
竜司「危ね、サンキュー隊長!」
名倉「うむ」
蘭子「だから言ったじゃん!」
竜司「ごめんごめんっ」
  ルシフェル、雄叫びを上げた。
ルシフェル「クソクソォ! コイツらここで来
 るのかよっ、全部台無しじゃねーか!」
  ルシフェル、赤黒いオーラを放つ。
陽「何だよ逃げるのか?」
  ルシフェル、赤黒いオーラと共に消える。
竜司「逃げられた!」
  竜司、棒キャンディを噛み砕く。
  名倉、少し考え指示を出す。
名倉「……帰投せよ」
  陽、竜司、名倉の乗る三機は蘭子の乗るキ
  ャリー・マザーに機体を接続しその場から
  去った。
  ゼノメサイア、その場に寝転がっている。
快「……俺一人じゃ何も出来なかった」
  創快(16)、人間の姿に戻る。
  そのまま膝から崩れ落ちた。
快「俺の存在する意味って何だ……?」

○メインタイトル
【XenoMessiaN 第6界 スコシズツ】

○河島家 真っ暗な空間
  河島咲希(17)、ルシフェルを咎める。
咲希「アンタ何やってんのさ!」
ルシフェル「しゃーねーだろ、こんなに早く組
 織が動き出すとは思わなかったんだ」
咲希「そうじゃない、アンタよくも愛里を撃っ
 たね……!」
  咲希、涙目になりルシフェルの胸倉を掴
  む。
ルシフェル「だからしゃーねーだろ、焦ってた
 んだ……」
咲希「仕方ないで済む問題じゃないでしょ、愛
 里を失ったら……」
  咲希、ルシフェルを突き飛ばす。
咲希「あの人を神として迎えられないじゃな
 い、そしたらアタシ達も核になれない!」
  ルシフェル、舌打ちをする。
ルシフェル「うるせぇ! とにかく俺は休ませ
 てもらうぜ!」
  ルシフェル、ソファに寝転がる。
咲希「アンタはいつもそう、その時の感情に任
 せすぎる……!」
ルシフェル「焦ってんだよ……」
咲希「まだ始まったばかりでしょ?」
ルシフェル「全然始まったばっかじゃねーんだ
 よ!」
咲希「そうだった、アンタにとってはね」

○Connect ONE極東本部 廊下
  TWELVEの隊員である名倉、陽、竜司、蘭
  子が歩いている。
  竜司、鼻歌を歌っていた。
蘭子「ふんっ」
  蘭子、竜司に苛立ち彼の脛を蹴る。
竜司「痛ってぇ!」
蘭子「オーバーリアクションむかつく!」
  陽、先程までの雰囲気とは打って変わり怯
  えている。
  身に付けているものもサングラスから眼鏡
  に変わっていた。
陽「ひぃっ……」
  蘭子、竜司に説教する。
蘭子「あの自分勝手な戦い方なに? 隊長が助
 けてくれなかったら死んでたじゃん!」
  竜司、脛を押さえながら答える。
竜司「そんなに心配してくれるのか、嬉しいね
 ぇ」
  蘭子、竜司の股間を蹴り上げる。
蘭子「ふんっ」
竜司「あ、がぁ……」
陽「竜司くんっ!」
  竜司、倒れ込む。
  陽、慌てて竜司に駆け寄る。
蘭子「一人が勝手な事すると全体に迷惑かかる
 から言ってんの! 誰があんたの心配なん
 か!」
  蘭子、一人でズカズカと進む。
  名倉、その様子を見て呟いた。
名倉「……今の俺から言いたかった」

○Connect ONE極東本部 会議室
  まるで教会のような会議室。
  TWELVEの四人、後方に立つ。
  参謀の田崎茂光(49)、瀬川公(53)、技術
  主任の時止救(38)が席に座っている。
公「予定を早めた初陣にしてはよくやった、し
 かしまた個々の力量に問題はあるな」
  公、竜司を指して言う。
公「特に早川竜司。一人で先行するなど君の器
 に相応しくない、神に与えられた役割を自覚
 したまえ」
竜司「へーい」
公「もっと真面目に聞きたまえ。一人に出来る
 事は限られている、身の丈に合わぬ野心は身
 を滅ぼすだけだ」
竜司「分かってますよ」
公「まったく、お前たちには信仰心が足りん」
竜司「くっ……」
  両者に募る苛立ち。
  時止、その雰囲気を察し間に入る。
時止「まぁまぁ、何度も言ってる事ですから彼
 らも徐々に理解していく事でしょう!」
竜司「サンキュー時止さん」
  時止、竜司にウインクをした。
田崎「確かに今はそんな話をしている場合では
 ありません、彼らのような者に任せた結果を
 しっかり話し合うべきではありませんか?」
  田崎、TWELVE隊員を見下すように言う。
  すると扉が開き新生継一(37)が入って来
  た。
新生「遅れてごめんね」
名倉「新生長官!」
竜司「やっと来てくれた……」
蘭子「新生さん!」
  TWELVE隊員、一気に表情が明るくなる。
新生「やぁお疲れ、元気そうで良かったよ」
  新生、中央の椅子に座る。
新生「じゃあ報告を頼むよ雄介」
  新生、名倉を手招きした。
名倉「はいっ……」
  名倉、緊張しながら前に出る。
  現場の報告を始めた。
名倉「えー、現場ではゼノメサイアとルシフェ
 ルが交戦中で我々が割って入りました。どう
 やらゼノメサイアが劣勢だったようです」
新生「うんうん」
名倉「我々の攻撃は通用しました、それでダメ
 ージを負ったのかルシフェルは逃げるように
 消えた……といった感じです」
公「どのように消えた? 走って逃げたのか?」
名倉「えっと……瞬時に姿が消えたように見え
 ました」
竜司「なんか赤黒い闇っぽいのに包まれて消え
 ましたよー?」
公「ふむ、やはりバベルか。ルシフェルも堕ち
 たものだな」
  蘭子、声を上げる。
蘭子「あのっ、いい加減その訳わかんない話の
 内容教えてくれません? 大事な事なら現場
 に出てるあたし達にこそ教えて欲しいんです
 けど!」
公「言葉を慎みたまえ、君たちはただ与えられ
 た役割を全うすればいい」
陽「分からない事だらけだ……」
田崎「我々も君たちのような外部からの寄せ集
 め集団に運命を託さなければならない現状が
 不安なのですよ、一般職員も同様です」
公「ゼノメサイアにも失望したな、神の御心と
 言えど肝心の中身がアレでは」
  名倉、小さく呟く。
名倉「ゼノメサイア、我々と同じ罪獣と戦う
 者……」
新生「どうしたんだい雄介?」
名倉「いえ、何でも……」
  新生、雰囲気を見て話す。
新生「みんな暗いよ? せっかく初陣が終わっ
 たんだ、もっと明るく行こう」
  新生、盛り上げようとするが全く変わらな
  い。
新生「それにTWELVEもまだ全員揃ってないん
 だしゼノメサイアも慣れてないだろう、これ
 からに期待しようじゃないか」
田崎「お言葉ですが長官、少々TWELVEに甘い
 のでは?」
新生「彼らは大切な仔羊だからね」
  新生、まとめに入る。
新生「いいかい? これからもTWELVEはゼノ
 メサイアと共に戦う事を命ずる!」
名倉「了解っ」
新生「では会議を終わろう、最後に一言。神の
 御心のままに!」
公「神の御心のままに」

○Connect ONE極東本部 休憩室
  竜司と陽、向かい合って座る。
  竜司、自販機の缶コーヒーを飲む。
竜司「ったく居心地最悪だったぜ」
陽「うん、なんか嫌だったな……」
竜司「てかこのコーヒー不味っ、蘭子ちゃーん」
  竜司、離れた席に座る蘭子を呼ぶ。
  蘭子、イヤホンを外し振り返る。
蘭子「何……?」
  竜司、飲みかけの缶コーヒーを差し出す。
竜司「コーヒー好きだったよね、いる?」
蘭子「それ不味いからいらない」
  蘭子、すぐにイヤホンを耳に戻した。
竜司「ちぇー」
  竜司、周囲を見渡す。
竜司「てかここも居心地最悪だな」
  他の職員たち、TWELVE隊員に冷たい視線
  を向けている。
  竜司、陽の向かいに戻り座った。
陽「仕方ないよ、僕らはイレギュラーなんだか
 ら……」
竜司「でも戦えるのは俺たちだけだぜ? だか
 らここにいるんだろ。文句あるなら自分で戦
 えってんだ」
  職員の一人である小林、竜司に近付く。
小林「戦えるなら戦ってるさ、機体の適性が無
 かったんだ。それを適合したからって素人同
 然のお前らに立場奪われて、最悪だ!」
  小林、背中を向けて去ろうとする。
小林「俺たちならヤツを倒せた……!」
  小林、休憩室から出ていく。
  他の職員たちも小林に合わせて去った。
  竜司、溜め息を吐く。
竜司「ん、隊長何見てんすか?」
  竜司、休憩室の端の方で資料を見る名倉に
  声を掛ける。
名倉「……ゼノメサイアだ」
  名倉、ゼノメサイアの資料を見ている。
竜司「仕事熱心っすね」
名倉「個人的に気になっただけだ、彼は本当に
 神のような存在なのか……」
竜司「……俺たちは自分の事で精一杯っすよ」
名倉「俺も……何故気になるのかは分からない」

○創家 玄関(日替わり)
  快、瀬川とのメッセージを見返していた。
瀬川(文面)「ごめん、俺が誘ったばっかりに」
快(文面)「お前のせいじゃない」
  快、スマホをポケットに仕舞い靴を履く。
  創美宇(24)、居間から顔を出した。
美宇「え、どこ行くの……?」
快「与方さんのお見舞い」
美宇「病院遠いでしょ、どうしても行かなきゃ
 ダメ……?」
快「俺のせいで怪我させちゃったんだ、意識戻
 ったみたいだし謝りたい」
美宇「快が外出る度に事件に巻き込まれるから
 心配なの、一人で待ってる間どんだけ怖いと
 思ってるの?」
快「それはっ」
美宇「父さんと母さんが死んだ時、一人で待っ
 てた時を思い出すの、お願いだから心配かけ
 ないで」
快「……俺だってヒーローになれずにもどかし
 いままは嫌なんだ、何もしないでいられな
 い……」
  快、そのまま玄関から出た。
  美宇、玄関に立ち尽くしている。

○総合病院 廊下
  快、愛里の病室前まで来る。
  快、話し声が聞こえ病室前で立ち止まる。
  入院している与方愛里(16)とお見舞いに来
  た河島咲希(17)の声だった。
咲希「え、じゃあ創を庇って撃たれたって
 事⁈ アイツ、ヒーローになりたいとか言っ
 ておきながら……」
愛里「そこまで言わないであげてよ、快くんだ
 って辛かっただろうし。ていうか快くんの夢
 知ってるの?」
咲希「一応アイツ小学校の時に同級生だったの
 よ、高々とヒーローになるって宣言してた」
愛里「じゃあ純希くんも知ってるの? 前会っ
 たとき挨拶してなかったけど」
咲希「向こうが気付かなかったから……」
  咲希、話を戻す。
咲希「そんで創の事だけどさ、ヒーローになり
 たいとか言ってる割に何回も問題起こして。
 ヒーローの器じゃないと思ってたけどさ」
  快、動悸が激しくなり呼吸が荒くなる。
快「はぁ、はぁ……」
  そのまま去った。

○総合病院 休憩室
  快、自販機で水を購入し頓服薬を飲む。
  咲希、快に声をかけた。
咲希「……アンタ何してんの?」
快「あ、河島さん……」
咲希「愛里に会いに来たの?」
快「そうなんだけど……迷惑だよね」
咲希「はぁ呆れた」
快「え?」
咲希「行くなら行ってあげな、少なくとも愛里
 はアンタを迷惑には思ってないみたいよ」
快「本当に……? 俺のせいで怪我したのに」
咲希「アンタもアンタで面倒だね、ここで行か
 なきゃ本当にヒーロー失格だよ? 責任も果
 たせないようなヤツがヒーローになれると思
 う?」
快「……わかったよ」
  快、愛里の病室へ向かう。

○総合病院 707号室
  快、病室の扉をノックする。
愛里「はーい」
  快、扉をゆっくりと開けた。
  愛里、ベッドに横になっている。
愛里「快くん! 来てくれたの?」
快「うん……」
  快、中に入ると多くの見舞いの品がある事
  に気付く。
快「あ、ごめん何も持って来なかった……」
愛里「いいのいいの、来てくれただけ嬉しい!」
  快、ベッドの隣の椅子に腰掛ける。
快「凄いな与方さんは、あんな事あったのに元
 気でいられて」
愛里「そんな事ないよ、みんなに心配かけたく
 ないから無理してるだけ」
快「そっか、やっぱ辛いよね」
愛里「でも快くんになら話せるから来てくれて
 嬉しい」
快「そっか……」
愛里「快くんはあれからどう助かったの?」
快「えっと、ゼノメサイアが助けてくれて……」
愛里「そっか、でもゼノメサイアも危なかった
 みたいだよね」
快「あ……」
愛里「凄い組織みたいなの来たんでしょ? こ
 れならもう安心だね!」
  快、項垂れてしまう。
快「でも俺は……ヒーローになれなかった。せ
 っかく応援してくれたのに、ごめん」
愛里「ううん、快くんだって頑張ってくれたじ
 ゃん」
快「まぁ……」
愛里「純希くんと二人で助けてくれたでしょ?
 私二人ともに感謝してる!」
快「でも結局純希が全部やってくれた、俺は何
 も出来なかったよ」
愛里「でも頑張ってくれたでしょ?」
快「いくら頑張ったってダメじゃ意味ない
 よ……」
  少し沈黙が流れる。
快「ごめん、俺帰るね」
  快、立ち上がり病室の扉の前に立つ。
  愛里、快を呼び止めた。
愛里「快くん!」
快「ん……?」
愛里「いつかヒーローになってくれるって信じ
 てるから!」
  快、そのまま病院を後にした。

○チキン店 厨房(夕)
  快、バイトの作業を黙々とこなす。
  横山純希(17)と先輩、快を心配する。
先輩「アイツいつにも増して暗いな」
純希「あんな事ありましたからね」
先輩「いやお前もじゃん、大丈夫なの?」
純希「大した怪我も無かったし寝てる暇あるな
 ら母さんのために働くのが俺にとってメンタ
 ルケアになりますから」
  快、器具を床に落としてしまう。
  純希、それを拾い手渡す。
純希「ホラ、一緒にやろうぜ。一人でこの量の
 洗い物キツいだろ?」
快「いいけど……」
  × × ×
  快と純希、大量の洗い物をこなす。
純希「バイト来れて良かったよ」
快「うん……」
純希「愛里ちゃんのお見舞い行ったんだって? 
 本人から聞いたよ」
快「そっか」
純希「……やっぱお前、相当気負ってるだろ」
快「責任って感じだよ……」
純希「一人で背負い込む必要ないって。あんな
 事件の責任、お前一人で背負える訳ないだ
 ろ」
快「でも与方さんが傷付いた事はどうしてもっ」
純希「あれもお前にどうにか出来る問題じゃな
 かったろ、ただの高校生一人に」
快「でも助けたかった、じゃないとヒーロー
 になんか……」
  純希、少し顔色を変える。
純希「あのな、ヒーローになりたいならその考
 えをやめた方がいいぞ」
快「え……?」
純希「ヒーローになりたいから助けるんじゃな
 い、助けたいからヒーローになるんだ」
快「それは……」
純希「お前は目標が先行し過ぎて今を見れてな
 い、いきなりレベル高い事に挑戦したらそり
 ゃ失敗するわな」
  快、手が止まる。
純希「今の時点で出来る事から始めるんだ、そ
 こから少しずつレベルアップしてきゃいい」
  快、病室での愛里の言葉を思い出す。
愛里(回想)「いつかヒーローになってくれるっ
 て信じてるから!」
  快、目を見開く。
純希「まずはこの洗い物から片付けようぜ、地
 道にレベルアップするチャンスだ!」
  純希、洗い物のスピードを上げる。
  快、黙って真剣な眼差しでスピードを上げ
  た。
純希「お、いい感じじゃん!」
  快と純希、洗い物を片付けた。

○とある裏路地(夕)
  ルシフェル、フラフラと歩いている。
ルシフェル「新鮮な体が必要だ……」
  ルシフェル、電話をしている男性を見つけ
  肩を掴んだ。
ルシフェル「お、いいじゃんお前」
男性「何ですか、ぅぐっ⁈」
  ルシフェル、男性の体に乗り移る。
  そしてエネルギーを解放した。
ルシフェル「この間は不意を突かれただけだ、
 しっかり準備すりゃ負ける事はねぇ!」
  ルシフェル、巨大化し罪獣のような姿とな
  った。
ルシフェル「なんせ俺は大天使様だからなぁ!」
  街中にルシフェルが出現した。

○Connect ONE極東本部 司令室
  オペレーター、席に座り言う。
オペレーター「ルシフェル再度出現!」
  新生、TWELVE隊員を整列させる。
新生「今回は前のような奇襲は望めない、正面
 から戦う事になるけど覚悟はいいかい?」
竜司「俺たちの存在意義を証明できるならやり
 ますよ」
陽「うんっ」
  TWELVE隊員、頷く。
新生「ならば行こう。TWELVE出動!」
TWELVE「了解!」
  TWELVE隊員、格納庫へ走った。

○Connect ONE極東本部 兵器格納庫
  TWELVE隊員、コックピットに乗り込む。
  それらは各々の機体に接続された。
オペレーター「ウィング・クロウ、ライド・ス
 ネーク、タンク・タイタン。それぞれコック
 ピット装填完了」
  竜司、コックピットの中で新たな棒キャン
  ディの包みを開け咥える。
  陽、彼もコックピットで眼鏡からサングラ
  スへと変えた。
陽「行くよアモン……へへっ」
  陽、サングラスをかけた途端に人が変わっ
  たように歯を見せて笑った。
陽「俺の出番だ!」
  各機体、次の工程へ移行する。
オペレーター「ライフ・シュトロームへのドッ
 キングを開始します」
  TWELVE隊員の身に付けたパイロットスー
  ツの背中にある突起に座席から注射のよう
  なものが接続される。
  緑色の光が流れ込みTWELVE隊員は苦しん
  だ。
竜司「ぐぅぅっ⁈」
名倉「む……」
陽「まだ慣れねぇなぁ……」
  各機体は次の工程へ。
オペレーター「三機、キャリー・マザーへ接続
 完了」
  各機体、蘭子の乗るキャリー・マザーに接
  続した。
オペレーター「カタパルトへの移動を開始」
  各機体、射出口へとやってきた。
オペレーター「ハッチオープン、全システムオ
 ールグリーン」
新生「では行こうか」
オペレーター「固定ギミック解除、射出権をパ
 イロットに譲渡します」
  TWELVE隊員、ハンドルレバーを握る。
  名倉、合図をした。
名倉「TWELVE、出る!」
  その声と共に全機のエンジンが全起動。
  勢いでキャリー・マザーを押し出し発射さ
  れた。

○街中(夕)
  ルシフェル、罪獣態になり暴れる。
  周囲の建物をあらかた破壊した。
ルシフェル「早く来い、暴れ易くしてやったぜ
 ぇ!」
  キャリー・マザー、ルシフェルの頭上に現
  れ巨大な影を作る。
蘭子「よし、切り離すよ!」
  蘭子の合図と共に三機が分離された。
  ウィング・クロウは空、ライド・スネーク
  とタンク・タイタンは地上へ。
名倉「目標を捕捉、これより駆逐にあたる」
  真っ先にウィング・クロウが動き出す。
陽「さっさと逝ねやぁ!」
  ルシフェル、ウィング・クロウに対処しよ
  うと右腕を上げる。
  その脇腹をライド・スネークは狙って飛び
  上がる。
竜司「隙アリ!」
  ルシフェル、左腕で地面を掬い上げ瓦礫を
  ライド・スネークに投げつける。
竜司「おわっ」
  竜司、ギリギリで避ける。
竜司「やっぱ一筋縄じゃいかねぇか……!」
  タンク・タイタン、ミサイルを一気に放
  つ。
名倉「多連装ミサイル!」
  ルシフェル、火球を放ちミサイルを着弾前
  に相殺した。
  爆風が辺りに舞い前に出ていたウィング・
  クロウが吹き飛ぶ。
陽「ぐぁっ……」
名倉「くっ、すまん……」
  蘭子、キャリー・マザーから見ている。
蘭子「ちょっと何やってんのさ!」
  ルシフェル、上空のキャリー・マザーを睨
  む。
蘭子「あ、マズいこれ……」
  ルシフェル、キャリー・マザーに火球を放
  った。
  ウィング・クロウ、間に割って入りシール
  ドを機体に纏わせる。
陽「シェル起動!」
  そのまま火球を防ぐが少し機体にダメージ
  が。
陽「お前がやられちゃ帰れないからな!」
蘭子「あっそう!」
  ウィング・クロウ、空中旋回しビーム弾を
  連射する。
  ルシフェル、喰らうが大したダメージは無
  い。
  蘭子、ルシフェルを分析する。
蘭子「分析結果でたよ! ダメ、これっぽちの
 攻撃じゃビクともしないほど硬い!」
竜司「じゃあ何かデカい攻撃が当てられれば」
蘭子「ヤツはさっき隊長のミサイルをわざわざ
 火球で防いだ、あのレベルの火力なら直撃し
 たらマズいって事じゃない?」
陽「でもどうやって隙を作る? 今の俺たちじ
 ゃ見向きもされねぇ」
  名倉、小さく呟いた。
名倉「……ゼノメサイアだ」
  一同、その言葉に少し悩む。

○チキン店 厨房(夕)
  快と純希、洗い物を終わらせる。
  先輩、制服から着替えて出て来る。
先輩「じゃあ先に失礼するわー」
純希「おつかれーっす」
  先輩、スマホを見ながら帰ろうとする。
先輩「うわマジか、また罪獣出たって。例の組
 織が戦ってるらしい」
  快、手が震える。
  純希、それに気付いた。
純希「手ぇ震えてるぞ無理すんな、お前巻き込
 まれっぱなしだからな」
快「ごめん……」
純希「先に休憩入って来い、しばらくワンオペ
 で頑張ってみるから」
快「え、いいの……?」
純希「無理しない事も立派な出来る事だぜ?」
快「……ありがとう」
  快、休憩室に向かう。
  純希の声が背後から聞こえた。
純希「よっしゃー、何でもかかって来いやー!」

○チキン店 休憩室(夕)
  快、着替えを済ます。
  グレイスフィア、蒼く輝いていた。
快「よし……」
  快、グレイスフィアを掌に置く。
快「ゼノメサイア、何で俺なんだ?」
  快、グレイスフィアを握る。
快「……自分で見つけろって事か」
  快、外に出る。

○チキン店 裏(夕)
  快、空を見上げる。
快「でもあるんだよな、俺が選ばれた理由が」
  快、グレイスフィアを握った拳を突き上げ
  ゼノメサイアに変身した。

○街中(夕)
  ルシフェル、全身から衝撃波を放つ。
  TWELVE各機、吹き飛ばされる。
蘭子「エネルギーが上がってる!」
陽「チッ、まだ力を隠してやがったか……」
  ウィング・クロウ、ビーム弾を連射しなが
  ら突っ込む。
  ルシフェル、尻尾を振りビーム弾を弾い
  た。
  ウィング・クロウ、ルシフェルの尻尾に当
  たり墜落しそうになる。
陽「マズいなっ……」
  ゼノメサイア、光を纏いながら現れウィン
  グ・クロウを墜落寸前でキャッチした。
陽「おぉっ……?」
  陽、コックピットから見上げるとゼノメサ
  イアの顔がそこにはあった。
陽「遅ぇよ」
  ルシフェル、ニヤリと笑う。
  ゼノメサイア、ウィング・クロウから手を
  離し再度飛ぶのを確認した。
ルシフェル「ヒヒ、来やがったな」
  ゼノメサイア、ルシフェルと向き合う。
  両者、そのまま走り出した。
快「おぉっ!」 
  ゼノメサイアとルシフェル、互いに激突し
  取っ組み合いの姿勢となる。
  ルシフェル、ゼノメサイアを押し倒せな
  い。
ルシフェル「コイツ、力が上がってる……⁈」
快「まだパニックじゃないんでね!」
  ゼノメサイア、ルシフェルの顔面を殴る。
  ルシフェル、口から血を散らせよろける。
  ゼノメサイア、ルシフェルの全身を攻撃し
  て行く。
ルシフェル「舐めるなよ!」
  ルシフェル、ゼノメサイアの攻撃を受け流
  し両手でゼノメサイアの肩を掴む。
  そのまま口を開け火球を放とうとした。
  ウィング・クロウとライド・スネーク、そ
  こへ突撃する。
  ルシフェルの背中へそれぞれ攻撃した。
  ルシフェル、ゼノメサイアを離してしま
  う。
竜司「俺らを忘れんじゃねーぞ!」
ルシフェル「クソ野郎がっ」
  タンク・タイタン、その隙を見てミサイル
  を放つ。
名倉「多連装ミサイル!」
  気を取られていたルシフェルに命中した。
  ルシフェル、絶叫する。
名倉「よく隙を作った!」
  陽と竜司、笑顔を見せる。
ルシフェル「ふざけんなよ、俺を本気で怒らせ
 やがったな!」
  ルシフェル、全身にエネルギーを溜める。
  蘭子、一同に警告した。
蘭子「ヤバいの来るよ!」
  ルシフェル、体を回転させながら天翔熱波
  を放つ。
  ゼノメサイアと各機、閃光の中で吹き飛ば
  されてしまった。
  地面に倒れる各機とゼノメサイア。
  周囲には赤黒い煙が立ち上る。
蘭子「みんな大丈夫……?」
  キャリー・マザー、何とか直撃は避け上空
  で浮かぶ。
  ルシフェル、勝ち誇っていた。
ルシフェル「ギヒヒ、俺の勝ちだな」
  ゼノメサイア、全身から蒸気を放つ。
快「がはっ、苦しい……!」
  快、動悸と呼吸が激しくなる。
  蘭子、各機体の状況を確認していた。
蘭子「みんな機体損傷率60%越えてるよ、大丈
 夫なの……⁈」
  TWELVE隊員、コックピット内で起き上が
  る。
竜司「心配してくれて有難いけどちょっとマズ
 いな……」
陽「こんな痛てぇの久々だ……」
  ルシフェル、鋭利な爪を立てて迫る。
名倉「くっ、これでは……」
  蘭子、視線を前に向ける。
蘭子「え、アレ……!」
  ゼノメサイア、苦しそうにゆっくり立ち上
  がろうと力を込めていた。
快「ダメだ、こんな所で寝てられないっ」
  TWELVE隊員、ゼノメサイアを見ていた。
  ゼノメサイア、拳を硬く握る。
快「今出来る事を最大限やるんだ、目の前の壁
 を壊して少しずつ前に進めっ……!」
  ゼノメサイア、よろけながらも立ち上が
  る。
名倉「き、君は一体……⁈」
  TWELVE隊員、拳を握る。
竜司「くっ、俺たちだって……!」
  TWELVE各機、エンジンを蒸した。
陽「やり返してやろうぜ」
名倉「うむっ」
  ゼノメサイア、全身にエネルギーを溜め
  る。
蘭子「ゼノメサイアのエネルギー上昇! あの
 雷撃を撃つ気かも!」
名倉「ならば全力でサポートするぞ!」
  TWELVE各機、散開し四方からルシフェル
  を攻める。
竜司「蘭子ちゃん、アンチ・グラビティだ!」
蘭子「うんっ」
  ライド・スネーク、瓦礫の山を駆け上が
  る。
  そのままルシフェルの右肩に散弾を当て
  た。
  しかしルシフェルの尻尾により地面に叩き
  つけられてしまう。
竜司「がはっ……」
  タンク・タイタン、ルシフェルに近付き近
  距離でミサイルを放つ。
名倉「おぉっ!」
  ルシフェル、近距離のミサイル攻撃に仰け
  反ってしまう。
  しかしギリギリで火球を放つ。
  タンク・タイタン、機体横が炎上する。
名倉「くっ、冷却っ!」
  タンク・タイタン、自身で消火する。
ルシフェル「ぐっ、クソがぁ!」
  ルシフェル、ゼノメサイアを見る。
  ゼノメサイア、まだ完全にエネルギーを溜   
  められていない。
ルシフェル「今度こそ終わりだ」
  ルシフェル、もう一度天翔熱波を放つ。
快「くっ……え?」
  ゼノメサイア、目を開ける。
  ウィング・クロウ、シェルを展開しゼノメ
  サイアを守っていた。
陽「まだだ、まだ耐えるぜぇ」
  ウィング・クロウ、シェルに亀裂が。
  陽、ゼノメサイアに言う。
陽「今のうちに溜めちまえ!」
  ルシフェル、天翔熱波の威力を高めた。
ルシフェル「邪魔だぁぁ!」
  ウィング・クロウ、シェルが破られ宙に舞
  う。
  辺りには煙が舞っていた。
陽「今だゼノメサイアー!」
  ゼノメサイア、煙が晴れると同時に右拳を
  突き出しライトニング・レイを放つ。
  ルシフェル、直撃してしまう。
ルシフェル「ぐががっ、俺の夢がぁ!」
  ルシフェル、爆散。
蘭子「はぁ、やった!」
  ゼノメサイア、安堵から地面にへたり込
  む。
快「少しは前に進めたかな?」

○河島家 真っ暗な空間(夕)
  咲希、椅子に座っている。
  ルシフェル、咲希の隣に立つ。
  ルシフェル、ボロボロだった。
咲希「アンタ生きてたの?」
ルシフェル「予め憑依してたからな、本体はや
 られてねぇ……」
咲希「都合いい力ね」

○記者会見(日替わり)
  新生、多くの記者に囲まれ会見を行う。
新生「Connect ONE長官の新生継一と申しま
 す。我々は政府直下の対罪獣信仰組織です、
 必ず皆様を幸せに導いてみせましょう」

○高校 2-B教室
  快と瀬川、スマホで新生の会見を見る。
瀬川「凄ぇ、本当に防衛組織じゃん!」
  瀬川、快の様子を見て自重する。
瀬川「ごめんこの話題は、俺が尾行に誘わなけ
 れば……」
快「いや感謝してるよ、お陰でヒーローに近づ
 くきっかけが出来たから」
瀬川「そうか? なら良かった……」
  愛里、登校して来る。
  咲希、驚いた。
咲希「愛里! もう大丈夫なの?」
愛里「うん、お陰様で元気いっぱいだよ!」
  快、立ち上がり愛里に近付く。
快「与方さん」
愛里「快くんおはよ、元気になったよ」
快「この間はごめん、卑屈になっちゃって……」
愛里「ううん、今は元気そうだからいいの!」
  愛里、快の顔を見て笑顔を見せた。
愛里「純希くんから聞いたよ、少しずつ頑張っ 
 てるって!」
  快、純希の名を聞き少し複雑な感情を持
  つ。 
  しかし精一杯の笑顔を返した。
快「ありがとね」

               つづく

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