【本編】
○池田坂大学 キャンパス内 廊下 (夕)
テツロー、ユウスケ、タツヒトの3人、教員室の扉に
ついた小窓から様子を見る。
中では和葉が矢倉に入部届を提出していた。
矢倉、和葉に何か言っているが3人には聞こえない。
3人、顔を見合わせ心配していると和葉と矢倉、3人
のいる小窓を見る。
3人、慌てて隠れる。
タツヒト「やべっ」
ユウスケ「止められたりしてんのかな?」
足音が近付いて来る。
そして扉が開いた。
3人、恐る恐るそちらを見る。
出て来たのは和葉1人だった、心配そうな表情を浮か
べている。
テツロー「ど、どうだった……?」
和葉「入部……出来ましたぁー!」
和葉、表情を変えて喜んだ。
3人も跳び上がる。
3人「よっしゃあー!」
和葉「でも1つ条件、私が入ったからにはちゃんと活動し
ろって。部室はまだ見張ってるからなって言ってた」
テツロー「十分だよ、君が来てくれてモチベ凄いから
さ!」
和葉、安心した表情を浮かべる。
4人、教員室の前から去って行った。
○池田坂大学 キャンパス内 演劇部部室 (日替わり)
珠里、パソコンを見て溜息を吐いた。
部員の増谷晃(19)、声を掛ける。
増谷「先輩、噂聞きました?」
珠里「何噂って?」
増谷「和葉が創作サークル……何だっけ? 名前忘れたけ
どそこに入部したって噂」
珠里「は? 何それ!」
珠里、廊下から聞こえて来る声に耳を澄ます。
開いた扉から見える廊下ではPOLARISの3人と一緒に
楽しそうに歩く和葉の姿が。
増谷「うわ、本当っぽいっすね」
珠里「何で……」
珠里、下唇を噛んだ。
○OP
○メインタイトル
【THIS IS POLARIS!】
○サブタイトル
『恋はデジャ・ブ』
○喫茶店 ルドベキア
4人、放課後に店に入ると美樹が出て来る。
美樹「いらっしゃい……あ、今日も来たんだ」
タツヒト「大ニュース、新メンバーっすよ!」
タツヒト、後ろから着いてくる和葉を紹介する。
和葉「どうも……ってあれ?」
美樹「和葉ちゃん⁈ 演劇部はどうしたの?」
2人の様子に戸惑う3人。
テツロー「え、2人ってお知り合い……?」
和葉「美樹さん3人のこと知ってたんですか?」
美樹「うん、よく来てくれる常連さん。でも何で和葉ちゃ
んと一緒なの?」
ユウスケ「えっとそれは……」
× × ×
4人、テーブル席に座り美樹がコーヒーを持って来
る。
美樹「お待たせ。でも良かったの? 演劇部辞めちゃっ
て」
和葉「後悔はしてません。これからもしないためにここで
頑張らないと」
美樹「そっか……」
ユウスケ「でもビックリですよ、美樹さんが演劇部のOG
だったなんて」
美樹「うん、だからシンパシー感じて君らを応援してたん
だよね」
和葉「私もここなら上手くやれそうって思ったから」
美樹「なら私はもう何も言う事ないよ。それで本格的に動
いてくの?」
テツロー「そうですね。だからまずは何が必要かの会議で
もしようと思って」
美樹「成程ね、じゃあごゆっくり〜」
美樹、仕事に戻る。
4人、会議を始める。
テツロー「さて、じゃあ映画制作に必要なものを纏めよ
う」
テツロー、ノートパソコンを開き調べる。
テツロー「まずはカメラ。これはスマホでも十分だね」
ユウスケ「でもさ、映画みたいに撮る技術は僕らにない
よ」
テツロー「最初はパクりから始めよう。色んな映画のアン
グルとか真似してさ」
ユウスケ「じゃあ固定するなら僕そういうの持ってるから
持って来るよ」
テツロー「オーケー助かる」
ユウスケ「任せて」
ユウスケ、嬉しそうな顔をする。
テツロー「後は衣装とか音楽とか、演者も集めないと
な……」
タツヒト「でもさ、それはどの脚本でやるかで変わるんじ
ゃね?」
ユウスケ「あ、確かにそうだね。どれが良いだろう」
ユウスケ、前のめりになる。
テツロー「ストックは沢山あるからなぁ、まずは短いのか
ら始めてみたら良いかも」
タツヒト「それならテツロー短編も書いてるやん」
和葉「うん、送ってもらったやつ以外も読んでみたい!」
テツロー、和葉のトーク画面を開く。
テツロー「あ、それならグループに入ったら?」
和葉「うん、招待して」
和葉、POLARISのグループトークに入る。
テツロー、短編の脚本を全て送った。
和葉「うわ、凄い量」
テツロー「書くしか出来なかったから、高校の時からの
分……」
ユウスケ「じゃあ僕のも送るよ……」
タツヒト「俺もー」
ユウスケとタツヒトも脚本を送る。
しかしテツローの数が圧倒的だった。
ユウスケ、不安そうな表情を浮かべる。
和葉「2人とも長編か……やっぱ短編にするならまずはテ
ツロー君のが良いんじゃないかな?」
タツヒト「俺も賛成ー」
ユウスケ、無言になってしまった。
○池田坂大学 POLARIS部室 (日替わり)
放課後、4人は部室に集まる。
ノートパソコンで自主制作映画のサイトを見ている。
タツヒト「どれがええんかな?」
和葉「これ去年の大賞だって、参考になるんじゃない?
しかも映画大学の人だし」
和葉が指したタイトルは『名もなき英雄』。
監督名に"千田昌也"と書いてある。
タツヒト「あ、これは……」
タツヒト、テツローの顔を見る。
和葉、不思議そうにしている。
テツロー「……良いよ、これにしよう」
和葉「う、うん……」
テツロー、リンクから動画サイトに飛び再生した。
4人、その自主制作映画を見て行く。
× × ×
4人、自主制作映画を見ている。
その最中、和葉はテツローが苦しそうな表情を浮かべ
ているのを見つけた。
× × ×
4人、見終わった後、感想を言い合っていた。
和葉「うーん、演出とかは良かったけど話があんま
り……」
ユウスケ「エモくしようとし過ぎて内容そっちのけだった
ね……」
タツヒト「やっぱこれが現状かいな」
和葉「テツロー君はどうだった?」
テツロー、ボーッとしている。
テツロー「え? あぁ、皆んなが言った通りだと思うよ。
でも撮影の参考にはなったんじゃないかな?」
和葉「だよね……」
和葉、他3人が静かになってしまった事が気になる。
和葉「ねぇ大丈夫? なんか元気なくなってるけど……」
テツロー「うん……やっぱ話した方がいいかな」
和葉「何……?」
テツロー「実は今の監督、千田昌也って俺の元同級生なん
だよね……」
和葉「あ、そうなんだ……」
テツロー「元々そいつと同じ大学行って一緒にやろうと思
ったんだけどもっと売れるものにしろって煩い奴
で……」
和葉「あー、なんかそんな感じする」
テツロー「でも俺の実力は認めてくれてたからこっち来た
時にめっちゃ文句言われてさ、それ以降ちょっと
ね……」
部室内、暗い雰囲気になる。
タツヒト、立ち上がり声を上げた。
タツヒト「でも今はそんなこと言うてもしゃーないやろ、
良くも悪くも参考にはなったんやから動き出さんと!」
和葉「そ、そうだよね……! ごめん話振っちゃって」
タツヒト、ノートパソコンをいじる。
タツヒト「お、製作費書いてあるで……うわ高っ!」
ユウスケ「えぇ、これで低予算なの……?」
テツロー「やっぱ金はいるよなぁ」
4人、考え込む。
和葉、アイデアを出した。
和葉「そいえば3人ともバイトはしてるの?」
テツロー「いや、やってない」
タツヒト「おいまさか……」
和葉、ニコりと笑った。
和葉「バイト始めよう!」
○都内 ミニシアター 面接室
4人、ミニシアターに面接に来た。
店長「君たちよく来てくれてるよね、覚えてるよ」
テツロー「はい、自分たちでも映画作りたいと思って。そ
れでお金が要るってなりまして」
店長「成程、いいね。応援するよ」
テツロー「はい……っ!」
店長「でも募集は1人なんだよね……」
テツロー「え」
4人、驚いて目を合わせる。
○喫茶店 ルドベキア
その後、4人はいつもの喫茶店で話をしていた。
タツヒト「んで結局テツローだけが決まったと」
テツロー「なんか申し訳ない……」
ユウスケ「謝る事ないよ、バイトなんて幾らでもあるだろ
うし」
タツヒト「せやな、俺も一発で受かるとは思ってへんかっ
たし」
ユウスケ「そいえばタツヒトさ、親父さんの警備会社で働
かないかって話あるって言ってなかった?」
タツヒト「うーん、気まずいんよなぁ……向こうは優しく
してくれるけどまだなぁ……」
和葉、テツローに問う。
和葉「どういう意味?」
テツロー「あ、言って良いのかなコレ?」
タツヒト「ええよ別に」
テツロー「うん……実はタツヒトの親父さんって離婚した
後の再婚相手で、丁度思春期だったってのもあって上手
くやるタイミング逃しちゃったんだ」
和葉「そうだったんだね……」
タツヒト「確かに当てと言えばそうなんやけどなぁ……や
るしかねぇかぁ……」
テツロー「え、マジで?」
タツヒト「これも俺らの将来のためや、帰ったら連絡して
みるわ。まだ募集してたらやけどな」
ユウスケ「おー、頑張れよー」
和葉、店内を見回し貼り紙を見つける。
和葉「待って、ここもバイト募集してんじゃん」
美樹、そのタイミングでコーヒーを持って来る。
美樹「お、気付いたか」
タツヒト「あー確かにここもアリやな、バイトなんて眼中
にあらへんかったから」
美樹「ここも人手不足でさー、誰か入ってくれたら私も楽
出来るんだけどなぁ」
タツヒト「じゃあ俺が……!」
ユウスケ「君はダメだ、当てが無い僕らの方が……」
ユウスケ、和葉と自分を指す。
美樹「じゃあ今ここで面接しちゃう? マスター、良いで
すよね?」
マスター「あぁ、でも人件費的に1人だ……」
ユウスケと和葉、喉を鳴らす。
和葉「恨みっこナシだからね」
ユウスケ「うん、そっちも」
2人の面接が始まった。
○都内 ユウスケの家 自室 (数日後)
ユウスケ、ピンクが基調の自室で女装のメイクをして
いる。
メイクの傍ら、スマホでは映画"アイフィールプリ
ィ"を再生していた。
ユウスケ「はぁ……」
すると母親がノックもせずに入って来た。
母親「ユウスケ〜、お前バイトは決まったの?」
ユウスケ「お前って呼ばないでって言ってるじゃん、まだ
だよ……」
母親「他のみんなは決まったんでしょ? 女装なんかして
ないでもっと焦らないと。その髪で落とされたって言っ
てたじゃん」
母親、ユウスケの長い髪を触る。
ユウスケ「やめてよ、髪は絶対切らないからね。アイデン
ティティなんだから……」
母親「また頑固なこと言って、そんなんじゃどこも雇って
くれないよ?」
ユウスケ「髪切るくらいならバイトなんてしないから」
母親「まったく、みんなの役に立ててないって言ったばっ
かなのに。そーゆー所じゃないの?」
ユウスケ、手が止まる。
ユウスケ「もう煩いなぁ! 余計なお世話だよ!」
ユウスケ、母親を自室から追い出す。
そしてメイクを再開したが手に力が籠ってしまい少し
荒くなってしまった。
ユウスケ「くっ……」
その時、流れていた映画ではこんな台詞が。
以下、画面上
× × ×
イーサン「みんな自分の事を分かってない。自分の嫌な部
分ばかりに固執して素晴らしい部分を見逃してるんだ」
× × ×
○都内 ミニシアター ホール
ユウスケ、女装してミニシアターに来た。
上映スケジュールを確認している。
すると受付でテツローが働いているのが見えた。
テツロー「は、はい……! 只今こちらの席が空いており
ます……!」
ユウスケ、テツローが働く姿を見かけミニシアターか
ら去った。
○都内 商業ビル 3F
ユウスケ、ミニシアターがあるビルでエスカレーター
を下っているとあるイベントを見つける。
看板には"写真家の卵"と書かれていた。
エスカレーターを降りて説明を見る。
どうやら学生の写真コンクールのようだ。
羨望の眼差しで中を覗く。
ユウスケ、自然と足が中へ運ばれた。
○都内 商業ビル 写真展
ユウスケ、学生たちの写真を見て行く。
写真の側には撮影した学生たちが解説をしていた。
ユウスケ「っ……」
ユウスケ、人混みを避けて行く。
すると自然に人気のない写真の所へ辿り着いた。
ユウスケ「おぉ」
その写真は真夜中の曇り空が写されており他の明るい
写真たちとは違い異彩を放っていた。
説明を見ると同じ池田坂大学の学生の作品である事が
分かる。
その写真を撮影した学生、向田照美(20)、ユウスケに
声を掛ける。
照美「お客さん、やっと来た」
ユウスケ「え? あぁ、貴女の作品……」
照美「え、男の人? 女の子かと思った」
ユウスケ「マジか、それは嬉しいな……」
ユウスケ、照美が持つ高そうなカメラに目を向ける。
照美「これ気になる? 親から貰ったんだけどさ、もっと
良いの撮れって言われてちょっと可哀想」
ユウスケ「えぇ? これ良いと思うけどなぁ」
照美「マジで? でも君しか来てくれてない、それが答え
でしょ」
照美、写真の解説を始める。
照美「私さ、他の奴みたいなキラキラしたの得意じゃなく
て。根暗だからさ、こーゆー暗いのにシンパシー感じる
んだよね」
ユウスケ「そうなんだね……」
照美「親は明るく育って欲しいと思って"照美"ってつけた
みたいだけどこんなになってなんか申し訳ないなぁ」
ユウスケ「いやそんな事……親が勝手に理想押し付けてる
だけじゃん……」
照美「そーゆー風に言ってくれるんだ、感謝だね。マジ感
謝」
ユウスケ「実は僕も女装とかあんま喜んで貰えてなく
て……だから気持ちは凄く分かるよ」
照美「おーお仲間さんですか」
ユウスケ「仲間ねぇ……」
照美「お仲間さん居ない感じ?」
ユウスケ「あ、一応いるけど……でもその人達の中ではち
ょっと役に立ててないなって思って。映画作るんだけ
ど……」
照美「へー凄いじゃん。応援してるから、自分に出来る事
見つけて頑張って」
ユウスケ「ありがとう、それじゃ」
ユウスケ、写真展から去る。
振り返ると照美、手を振っていた。
○都内 ユウスケの家 自室 (夜)
ユウスケ、スマホで通話している。
相手は奥村四季(22)だ。
ユウスケ「それでさ、あんま役に立ててないなと思っ
て……僕も出来る事といえば脚本しかないのに」
四季「昔からネガティブだよねー、そんな気負わなくて良
いのに」
ユウスケ「でもさ、他に何やれば良い? かろうじてカメ
ラスタンドは持ってけるけどさ」
四季「あのね、役に立つとか立たないとか関係なくみんな
はユウちゃんのこと仲間だと思ってくれてると思うよ?
私だって利害とか関係なく友達でいたいと思ったし」
ユウスケ「あ、うん……」
四季「あ、今フラれた時のこと思い出したでしょ? まだ
引き摺ってんのー?」
ユウスケ「いやだってさ、ずっと四季ちゃんのこと好きだ
ったからショックも大きかったんだよ……」
四季「ふふ、その気持ちは有難いけどさ。私らは恋愛じゃ
なく男女の友情として関わって行きたいなー」
ユウスケ「うん……」
四季「それでさ、良い人いないの? 女の子と付き合えば
ユウちゃんの自己肯定感も上がると思うんだ」
ユウスケ「居ないよ、居たとしても四季ちゃんを超える人
じゃないと……」
四季「もーそこは妥協でも何でもしないと! 役に立ちた
いって話にも通ずると思うよ? ユウちゃん変に拘り強
いとこあるからなー」
ユウスケ「そうだよね、そのせいで上手く行かない……」
四季「だからネガティブにならない! 脚本以外にも出来
る事探して、そこから始めれば良いじゃん!」
ユウスケ「脚本以外ね……」
ユウスケ、何かを思い出す。
ユウスケ「……新しい仲間を連れて来るのってアリか
な?」
四季「良いんじゃない? 誰か当てあるの?」
ユウスケ「まぁ今日知り合ったばっかの人だけど……気が
合いそうな感じがするんだ」
四季「そっか。じゃあそろそろ時間だから切るね、応援し
てるからー」
ユウスケ「うん、おやすみ」
ユウスケ、通話を切る。
覚悟を決めたような表情を浮かべた。
○池田坂大学 キャンパス内 (日替わり)
POLARISの4人、部室に向かい歩いている。
ユウスケ、ソワソワして辺りを見回していた。
タツヒト「どしたん?」
ユウスケ「え? いやえっと、何でもない……」
タツヒト「おいおい、また役に立ててないって気負ってん
ちゃう? 大丈夫やって、俺も同じやし」
ユウスケ「まぁそうだけど……僕は脚本に拘ってたから」
タツヒト「俺が拘りないみたいな言い方やな、まぁ確かに
お前ほどないけどな」
ユウスケ「でも今は違くて……」
和葉「何か探してるの?」
ユウスケ「あ! うん、まぁ人を……」
タツヒト「何や、もしかして新メンバー? 誰か当てにな
る人見つけたんか?」
ユウスケ「まぁ……ちょっと喋っただけだけど気が合いそ
うだなって思って……」
テツロー「良いじゃん、どんな人?」
ユウスケ「えっと……ちょっとミステリアスな雰囲気だけ
ど芯があって、僕らと創作スタンスも合ってて……僕の
女装を女の子かと思ったって言ってくれて、仲間とも言
ってくれた女の子……」
テツロー「へぇー、気になるな」
タツヒト、その話を聞いて問う。
タツヒト「おいおい、今の感じその子の事好きになっと
る? 四季ちゃんはどうしたー?」
ユウスケ、カチンと来てしまった。
ユウスケ「いやそんなんじゃ無いし……四季ちゃんへの気
持ちは変わってないよ、女の子の話なら何でも好きって
訳じゃない」
タツヒト「あぁ悪りぃ、別にそんなつもりじゃ……冗談や
ん……」
ユウスケ「別にテツローだって和葉さんのこと好きだから
誘った訳じゃないでしょ?」
テツロー「え! あぁ、別にそーゆーつもりでは……」
テツロー、和葉の顔色を伺いながら言った。
和葉「う、うん……そりゃそうだよね」
和葉、テツローの慌てように驚く。
テツロー、顔を赤くしている。
ユウスケ、仕切り直す。
ユウスケ「とにかく! そーゆーんじゃないから!」
ユウスケ、歩き出す。
タツヒト「ちょ、どこ行くねん?」
ユウスケ「その子探しに行く、この学校だから」
ユウスケ、1人で去ってしまった。
他3人、取り残される。
○池田坂大学 キャンパス内 写真部部室
ユウスケ、写真部の部室に行き扉をノックする。
写真部の部長、扉を開ける。
部長「はい、何か用ですか?」
ユウスケ「えっと……向田照美さん? いません
か……?」
部長、不思議そうな顔をする。
部長「いや、アイツなら写真部には入ってないですよ」
ユウスケ「そうなんですか?」
部長「俺らも誘ったんですけどね、断られちゃって」
ユウスケ「なるほど……」
部長「アイツなぁ、被写体探して学内彷徨いてるから会い
たいなら学校中探すしかないと思いますよ」
ユウスケ「分かりました、ありがとうございます……」
ユウスケ、写真部部室を去る。
○池田坂大学 キャンパス内 階段 (夕)
照美、階段下のゴミ置き場を撮っている。
ユウスケ、息を切らしてやって来た。
ユウスケ「はぁっ、やっと見つけた……」
照美「えっと、どなたです……?」
ユウスケ「え? あっ、女装してないから……っ」
照美「あぁもしかして昨日の?」
ユウスケ「そうそう、ちょっと話したくて……」
照美「えー、私に何の用?」
× × ×
2人、階段に座り話す。
ユウスケ、事情を説明した。
照美「じゃあ私にカメラマンになって欲しいと?」
ユウスケ「率直に言うと……そう」
ユウスケ、焦って言葉を連ねる。
ユウスケ「えっと、昨日話聞いてさ。創作のスタンス合う
かなと思って……撮影の事わかる奴誰もいないから」
照美「ふーん、でも君たちがどんな映画作りたいのか分か
らないからなぁ」
ユウスケ「脚本送るよ、連絡先教えてくれれば……」
照美「ん、じゃあ」
照美、スマホを差し出す。
ユウスケ、驚きながらも連絡先を交換した。
ユウスケ「えっと、どれが良いかな……」
ユウスケ、脚本のファイルを選ぶ。
多くのテツローの脚本があったが悩んだ末、自分の脚
本を送る事にした。
ユウスケ「これ、僕が書いたやつ」
ユウスケ、照美に自作の脚本を送る。
照美、ファイルを開き読み始めた。
以下、画面上
× × ×
タイトル『ブレインコントローラーウォーズ』
× × ×
ユウスケ「え、今読むの?」
照美「ダメ? 自信あるんでしょ?」
ユウスケ「まぁそうだけど……」
照美、脚本を読み進めて行く。
× × ×
ユウスケ、ソワソワしている。
照美、読み終えた。
照美「なるほどね」
ユウスケ「ど、どうだった……?」
照美「うん、テーマは悪くないと思う。弱者目線で仮想の
人生を体験するとか良い感じ」
ユウスケ「あっ、じゃあ……」
ユウスケ、表情が明るくなる。
照美「ただ肝心の内容がね、ちょっと思想強すぎ。作者の
思想に自信がないから共感して欲しすぎて書いてる感が
剥き出しなんだよね、キャラに作者の思想をまんま喋ら
せてるってゆーか」
ユウスケ、一気に表情が曇る。
照美「キャラ1人の思想が強い分には良いんだけどね、作
品全体にそれが漂ってたらダメだよ。それを補えるだけ
の内容も無いし」
ユウスケ「あ、うん……」
照美「あとロケーションとかも私が撮りたい感じじゃない
な、理想の世界を生きるみたいな感じだから必然的に画
が明るくなるんだよね。私暗い感じのが撮りたいから」
ユウスケ「そっか……」
照美、ユウスケの様子を見て少し慌てる。
照美「あ、でもテーマは良いから。基礎をちゃんと押さえ
れば良くなると思うよ。それが出来るようになったらも
っかい来てよ」
照美、立ち上がりその場から去る。
ユウスケ、下を向いて落ち込んだ。
○池田坂大学 キャンパス内 POLARIS部室 (夕)
テツロー、タツヒト、和葉の3人、つけていた映画を
止めてバイトの支度をする。
ユウスケ、そこに入って来た。
落ち込んだユウスケの様子に3人も気付く。
タツヒト「おぉ、どうやった……?」
ユウスケ「僕の脚本読んで貰ったけどさ、ダメだって」
テツロー「そっか……」
ユウスケ「なんか恥ずかしいなぁ。テツローの悩みに共感
してたつもりだけどさ、まだ僕はその段階ですらなかっ
たみたい。烏滸がましかった」
テツロー「え、そんな事は……」
ユウスケ「そんな事あるよ、実力不足だし足引っ張ってば
かりだよ僕。僕のせいで照美さんにもPOLARISがダメ
だって思われちゃったし……」
タツヒト「おいそんなネガティブになるなよ、これから伸
ばせばええんやから」
ユウスケ「うん、それは分かってる。でも辛いんだ」
ユウスケ、そう言い残し部室を去ろうとする。
タツヒト「おい待てって!」
タツヒト、追いかけてユウスケの肩を掴む。
ユウスケ「ごめん、今はここにいるだけで辛い……」
タツヒト、手を離しユウスケは去る。
テツローと和葉、その様子を見ていた。
和葉「ウソ……」
3人、その場に立ち尽くしてしまった。
○池田坂大学 キャンパス内 正門 (夕)
ユウスケ、正門前で立ち止まりスマホを操作する。
照美にテツローの脚本を送った。
以下、画面上
× × ×
ユウスケ「ダメな脚本送ってごめん、でも誤解されたくな
いんだ。僕が実力不足なだけで他は凄いから」
ファイル添付
× × ×
○池田坂大学 キャンパス内 POLARIS部室 (日替わり)
テツロー、タツヒト、和葉の3人、部室にいる。
暗い顔をしていた。
タツヒト「ユウスケ学校休んどったで……」
和葉「やっぱりそうなんだ、見ないと思ったら……」
タツヒト「何だよ、せっかく動き出したってのに……」
テツロー「俺のせいなのかな……」
タツヒト「はぁ? 何でやねん」
テツロー「俺さ、自分の映画で辛い人を救えればって思っ
てた。でも逆に傷付けちゃったんじゃないかって……」
タツヒト「そんな事あらへんって、流石にアイツがネガテ
ィブすぎるだけや」
テツロー「それはそうだけど……傷付けちゃったのは事実
だから……」
3人、沈黙。
すると部室の扉が開いた。
タツヒト「ユウスケ⁈」
しかし入って来たのは照美だった。
タツヒト「えっと……どちらさん?」
照美「あの、ユウスケ君は……?」
和葉「今日は来てないけど……もしかして」
和葉、照美が首から下げているカメラを見る。
照美「えっと……彼から聞いてないかな?」
和葉「やっぱり誘ったって言ってた人?」
照美「そう、あの後他の脚本送られて来て……読んで良か
ったから連絡したんだけど返事なくて心配で」
テツロー「え、そうだったの……?」
照美「私が余計なこと言っちゃったのかなって思うと申し
訳なくて……謝りたかったんだけど……」
テツロー、少し考えて立ち上がる。
テツロー「よし、決めた」
タツヒト「何や改まって……?」
テツロー「連れ戻しに行こう」
つづく
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