恐竜怨霊 ホラー

いつも一人、個室トイレを好む少女・サキ。ある日、校内で生徒や教師が次々と原因不明の死を遂げる。霊感を持つサキだけが、光る玉を食らう恐竜の幽霊を目にしていた。優しかった保健室の先生も命を落とし、最後に恐竜の幽霊は「生きているのが羨ましい」と語りかける。そして少女もまた、静かにその存在に取り込まれ、校舎から人の気配が消えた。
飴屋 81 0 0 08/02
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第一稿

『恐竜怨霊』

脚本

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●1 廊下(昼)

しん、と静まり返った校 ...続きを読む
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『恐竜怨霊』

脚本

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●1 廊下(昼)

しん、と静まり返った校舎の廊下。
窓から差し込む光が床に長い影を落としている。

●2 個室トイレ・中(昼)

少女(サキ)、便座に座り、膝を抱えている。
ここが彼女の"居場所"だ。
チャイムの音が遠くに響く。

サキ(モノローグ)
(静かに)
ここが一番、落ち着く。

●3 廊下(昼)

保健室の先生(ミズキ)、書類を抱えて歩いている。
ふと、足を止める。

ミズキ
あれ……?

その瞬間、廊下の向こうで生徒が一人、崩れ落ちるように倒れる。
続けて、また一人。
教室の中からも、バタバタと倒れる音。

ミズキ
(駆け寄りながら)
ちょっと、大丈夫!?

倒れた生徒の手首を掴み、脈を測るミズキ。
表情が凍りつく。

ミズキ
……脈が、ない。

次々と駆けつけるが、倒れている者は全員、同じだ。
脈がない。すでに死んでいる。

ミズキ
(声を震わせ)
うそ……なんで……何なのこれ……

●4 個室トイレ・中(昼)

異変を察したサキ、顔を上げる。
彼女には、他人に見えないものが見える力がある。

サキ(モノローグ)
……来てる。

サキ、便座から立ち上がり、個室の扉を開ける。

●5 廊下(昼)

サキ、そっとトイレを出て、廊下の物陰から様子を窺う。

淡く、暖かい黄色の光が廊下の奥に浮かび上がる。
光はやがて輪郭を持ち――巨大な恐竜の"幽霊"の姿になる。
美しく、しかしどこか物悲しい光を纏っている。

――だが、この姿はミズキにも生徒たちにも見えていない。
見えているのは、観客とサキだけである。

恐竜の幽霊は歩いていた生徒の体に頭を近づけると、
その胸のあたりから光る玉を、ゆっくりと引き抜くように食べる。

玉が抜かれた瞬間、生徒はその場に崩れ落ちる。

ミズキから見れば、何もない空間で、生徒が突然、糸が切れたように崩れ落ちただけだ。

ミズキ
(悲鳴)
きゃあああっ! な、なんで、いきなり……!

ミズキ、何もない空間を見回すが、そこには何も見えない。
恐竜の幽霊は構わず、また別の生徒へと向かう。

サキ、物陰から目を逸らせずに見つめている。

●6 保健室・前(夕)

サキ、廊下の角から保健室の様子をそっと覗いている。
生き残った数人の生徒とミズキが集まっているのが見える。
窓の外はすでに橙色に染まっている。

ミズキ
(震える声で)
とにかく、みんなで固まっていましょう。一人にならないで。

生徒A
でも……なんで、みんな急に死ぬんですか……理由が、わからない……

ミズキ
わからない……わからないの。

サキ、そのやり取りを見届けると、静かにその場を離れる。

●7 校舎・各所(夕〜夜、モンタージュ)

・教室の中に、床の隙間から光が滲み出す。誰も気づかない。
・階段の踊り場に、突然、恐竜の幽霊が現れる。生徒はただ振り返るだけで、何も見えない。
・体育館の暗闇から、静かに近づいてくる。

どこにいても、恐竜の幽霊は現れる。
それは誰の目にも映らない。
だから、逃げ場はない。

一人、また一人と、何も見えないまま、光る玉を食べられ、崩れ落ちていく。
生き残った者たちは、ただ「原因不明の突然死」が続いていることに、恐怖するばかりだ。

その合間、サキが階段の踊り場や、下駄箱の陰、渡り廊下の隅を
一人、静かに移動していくカットが挟まれる。
誰にも声をかけず、誰にも気づかれず、ただ見て回っている。

●8 保健室(夜)

サキ、保健室の入口の陰からそっと中を見ている。
残るのはミズキと、数人の生徒のみ。

ミズキ
(震えながら、生徒たちを守るように立つ)
大丈夫……大丈夫だから……

保健室のドアの隙間から、黄色い光が滲み込んでくる。
恐竜の幽霊が、壁をすり抜けて姿を現す。
だが、ミズキにも生徒たちにも、その姿は見えない。

ミズキ
(何もない空間に怯えながら)
……っ、何か、いる……?

恐竜の幽霊、ミズキの胸に顔を近づける。
ミズキには、ただ胸のあたりに冷たい何かが触れる感覚だけがある。

ミズキ
(小さく、震えながら)
……いや……なに、これ……

光る玉が、ミズキの体から引き抜かれる。
ミズキ、その場に崩れ落ちる。
最後まで、彼女はそれが何であったのか、わからないままだった。

サキ、陰から一部始終を見ていた。
声も出せず、ただ立ち尽くしている。

●9 廊下〜個室トイレ・中(夜)

サキ、ふらふらと廊下を歩き、いつもの個室トイレへ戻る。
扉を閉め、便座に座り、膝を抱える。
唯一、話し相手になってくれた人がいなくなった。

サキ
(小さく)
……先生。

●10 個室トイレ・前(夜)

黄色い光が、トイレの扉の隙間から滲み出す。
恐竜の幽霊が、静かに姿を現す。

●11 個室トイレ・中(夜、続き)

恐竜の幽霊、サキの目の前に佇む。
サキ、涙を拭いながら、恐竜の幽霊を見上げる。

サキ
……なんで、こんなことするの。

恐竜の幽霊は答えない。
その代わり、光がサキの頭の中に流れ込んでくる。
――遠い昔、大地を駆けていた恐竜たちの姿。
――絶えていく命。
――二度と戻れない過去。
――生きて笑う人間たちを、ただ見つめ続ける影たち。

イメージの奔流の中に、一つの"想い"が浮かび上がる。

(イメージの声)
羨ましいんだ。
生きているということが。
私たちはもう、生きられない。
幽霊になって、ただ見ている。
過去には戻れない。
どうにもならない。
……羨ましい。

光が消え、恐竜の幽霊もまた、静かに姿を消す。

サキ
(呟く)
……そっか。

サキ、再び便座に座り、目を閉じる。
静かに、落ち着いた表情。

●12 個室トイレ・中(夜、続き)

その背後から、そっと黄色い光が滲み出す。
恐竜の幽霊の気配が、サキの背中に重なるように入り込む。

サキ、小さく息を漏らす。
表情は、恐れではなく、どこか安らいでいる。

やがて、光がサキを包み込み――
静寂だけが、個室に残る。

●13 校舎・全景(夜)

真っ暗な校舎。
どの窓にも、灯りはない。

こうして、校舎から最後の人間の気配が消えた。

暗闇の中、遠くでかすかに、暖かい黄色の光が瞬く。

――終わり――

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