〇暗闇
女の笑い声が聞こえる。
徐々に笑い声が大きくなる。
〇マンション・松井家・部屋(朝)
小さな叫び声を上げながらベッドから起き上がる松井理佳
(26)。
理佳「夢か…」
× × ×(時間経過)
鏡を見ながら化粧をしている理佳。
目の下の隈が気になる。
ファンデーションで隠そうとするもなかなか隈は消えない。
理佳「もう、何で消えないの!」
時計に目をやる理佳。
理佳「あぁ、遅刻しちゃう!」
〇電車・中(朝)
満員電車に乗っている理佳。
電車の揺れで理佳がドアに押し付けられる。
理佳「…」
〇時津高校・前・道(朝)
理佳が走って学校の中に入っていく。
〇同・職員室・中(朝)
席に着き、深呼吸してお茶を飲む理佳
理佳M「あぁ、間に合った」
同僚の望月奈々子(27)が理佳の隣の席に着く。
奈々子「おはよう」
理佳「おはよう」
奈々子「最近いつもギリギリだね出勤」
理佳「何か目覚めがここの所悪くて」
奈々子「ちゃんと寝て…(理佳の顔を見て)ない感じね?」
理佳「隈、出てるでしょ?」
奈々子「うん」
理佳「ちゃんと睡眠は取ってるはずなんだけど…」
詩行開始のチャイムが鳴る。
理佳「あー、私一時間目から授業だ。行ってくる」
〇同・廊下(朝)
教科書を手に持ち歩いている理佳。
理佳「あっ」
突然睡魔が襲いだし、ふらつく理佳。
理佳「…」
〇道(夕)
仕事帰りの理佳。
向かいから、男(20)が理佳を見つける。
理佳に近づいてくる男。
男に気付き驚く理佳。
男「うわぁ。こんな所で会うなんて偶然だね!」
理佳「は?」
男「え?」
理佳「誰ですか?」
男「誰って…覚えてないの?俺だよ俺」
理佳「だから誰ですか?」
男「本当に覚えてないの?大樹だよ」
理佳「ナンパですか?だったら他当たって下さい。私には彼氏が居る
んで」
男を押し退け歩いていく理佳。
男はおかしいなと首を傾げる。
理佳「ったく何なのよ!あんなチャラついた男なんて全然タイプじゃ
ないの!」
〇マンション・松井家・部屋・中(夜)
理佳が彼氏の須藤拓巳(29)と、電話をしている。
理佳「まさかナンパされるなんて思ってなかったけど…怖かったー。
私の事まるで知ってるような言い方で。こっちは見覚えが全くない
のに」
拓巳の声「ほんと、気をつけろよ。でも、ごめんな。俺が出向で今理
佳の隣に居られないから」
理佳「うぅん…仕事だから仕方ないよ。こうやって声聞けるだけで
も」
拓巳の声「週末休みになったらそっち行くから」
理佳「うん…うん…待ってるね。それじゃおやすみなさい。はい」
電話を切って、スマホをテーブルに置き、冷蔵庫からジュース
を出す理佳。
電話がかかってくる。
理佳「ん?」
ディスプレイを見ると見覚えのない電話番号。
理佳「誰だろ…」
電話に出る理佳。
理佳「もしもし…?」
〇クラブ・中(夜)
男が理佳に電話をしている。
後ろから大音量で音楽が流れている。
男の声「あっ繋がった。もしもし」
〇マンション・松井家・部屋・中(夜)
電話に出ている理佳。
以後カットバックで
理佳「もしもし?誰?」
男の声「俺だよ俺。会ったのにもう忘れたの?」
理佳「は?さっきって…」
大樹の声「大樹だよ。大樹」
理佳「え…」
〇フラッシュ
大樹が理佳に声をかけている。
〇フラッシュ戻り
理佳が体を震わす。
理佳「ちょ…何で、私の番号知ってるの?」
大樹の声「何でって(笑う)そっちから教えてくれたんじゃん」
理佳「変な事言わないで!何で私から見ず知らずのあなたに番号教え
なきゃいけないの?」
大樹の声「もう、そんな怒らないでよ!ねぇ今日これから会えない?
前に会ったクラブに居るんだ。今日はダチも居るし楽しもうよ」
理佳「いい加減にして!」
電話を切ろうとする理佳。
大樹の声「会ってくれないなら、あの秘密ネットにばらまくよ?」
理佳「な、何よ…もしかして脅迫してるの?」
大樹の声「俺だってこんな事したくないよーだから遊ぼうよ!待っ
てるからそれじゃあ!」
電話が切れ、理佳はスマホを投げるようにテーブルに置く。
理佳「(声が震え)な、何なのよ…」
怖くなりベッドの中へ潜り込む理佳。
暗転。
× × ×(時間経過・朝)
目を覚まし勢い良く起きる理佳。
時計を見ると、出勤時間はとっくに過ぎている。
理佳「嘘…」
× × ×
理佳が学校に電話をかけている。
理佳「はい。連絡が遅くなってすみません。ちょっと体調がよくなく
て…はい。ありがとうございます。ではお言葉に甘えて数日休ませ
てもらいます。申し訳ありません。はい…失礼します」
電話を切る理佳。
理佳「うっ…」
気分が悪くなり、口を手で押さえ洗面所へ行く。
〇同・洗面所(朝)
理佳がかけてきて、蛇口をひねり水を出しながら吐く。
鏡を見る理佳、以前より目の下の隈が酷くなっている。
理佳「え…」
理佳が唇に手を当てる。
真っ赤な口紅が塗られている。
理佳「こんな色の口紅持ってないのに…」
〇同・部屋(時間経過)
ベッドで何度も寝返りを打っている理佳。
理佳M「自分の知らない所で、何が起きてるの…」
スマホが鳴り電話に出る理佳。
理佳「もしもし…」
大樹の声「あっ起きてた?俺、大樹」
理佳「あっ」
大樹の声「昨日やっぱり来てくれたじゃん!俺のダチとも意気投合
しちゃってさ」
理佳「私は、あなたの事なんか知らないの!いつまでこんな事する
つもりなの!」
大樹の声「どうしてそうやってとぼけるんだよ」
理佳「とぼけてなんかない!これ以上電話してくるようだったら警
察に通報するから!」
大樹の声「それは、そっちの勝手だけどさ、警察に言うと困るのは
そっちじゃねぇの?」
理佳「どういう意味よ」
笑っている大樹。
気味が悪くなり電話を切る理佳。
× × ×(日替わり)
ベッドに潜り込んで震えている理佳。
理佳N「あれから、大樹以外からも、見ず知らずの男から誘いの電
話がかかってくるようになった」
男Aの声「ねぇ、今日も遊ぼうよー」
男Bの声「昨日の続きがしたいんだけどなあー」
男Cの声「今日はもっと楽しもうよ」
理佳の顔がまた一段と青白くなっている。
理佳M「拓巳に連絡をしようと思ったけど…」
大樹の声「今日も俺達を喜ばせてくれよな!」
理佳M「変に心配かけると思ったら出来なかった…でも、今日やっ
と会える。話を全部聞いてもらおう」
F.O
〇マンション・松井家・外観(夜)
〇同・入口(夜)
男がマンションの中に入っていく。
〇同・部屋(夜)
拓巳が来るのを待っている理佳。
チャイムが鳴る。
理佳「拓巳…?」
〇同・玄関・中(夜)
理佳が来る。
ドアスコープを覗こうとした瞬間激しいドアノックの音がする。
理佳「ひぃっ!」
大樹の声「おーい!居るんだろ?」
怖くなり腰が抜けてしまう理佳。
大樹の声「ちゃんと時間通りに来たんだから開けてよー」
ドアノブをガチャガチャ回している大樹。
大樹の声「早く開けないと大声で秘密ばらすよー!」
理佳M「この男が言ってる秘密がわからない…一体何を知ってるの?」
ゆっくりと、ドアのカギを外しノブを回す理佳。
大樹が顔を出す。
大樹「よぉ!」
理佳「(怖くて声が出ない)」
大樹「これ」
大樹がディスクを理佳に渡す。
理佳「何ですか?何で私の家がここって知ってるんですか!」
大樹「そっちが教えてくれたんだろ!なぁそれよりこれ見れば、俺が
言ってる事が分かるから」
理佳「どういう意味…」
大樹「まぁまぁ、これ見て楽しんでよ。それじゃ」
帰っていく大樹。
〇同・部屋(夜)
ディスクを手にした理佳が来て、レコーダーにディスクを入れ再
生する。
テレビ画面に映像が流れるのを見て驚愕する理佳。
そこには雰囲気が全く違う理佳が写っている。
男を周りに囲わせたり、一人ずつキスをしたり、口に含んだ酒を
相手の口に移したりしている。
理佳「これ…私なの?」
身体が震える理佳。
場面が変わり、男たちと一緒にクスリに手を付けだす。
理佳「う、嘘でしょ…」
また場面が変わり、理佳が座っているのが写る。
理佳と映像の理佳がずっと見つめ合っている。
画面の中の理佳が何かぶつぶつと呟いている。
ずっと画面の中の理佳を見ていると睡魔が襲ってくる。
理佳が気を失うように眠り暗転。
〇同・玄関・前(夜)
顔は青白く虚ろな目をし、派手な服に着替えた、理佳が出てきた
時に拓巳がやって来る。
拓巳「おぅ、理佳。遅くなって悪かったな」
理佳は拓巳を無視している。
拓巳「理佳?どこ行くんだよ」
理佳が拓巳を見る。
拓巳が見た事のない表情をしている理佳。
拓巳「理佳?」
拓巳の横を通り抜け、ふらふらしながら歩いていく理佳。
拓巳「ちょっと待てよ。理佳、どうしたんだ よ?」
理佳の腕を掴む拓巳にそれでも行こうとする理佳。
拓巳「おい!理佳!いい加減にしろよ」
引き止めようとする拓巳だが、段々と互いにもみ合うようにな
る。
拓巳「あっ!」
拓巳が階段を踏み外し激しく階段から転げ落ちていく。
拓巳「うぅ…」
眉間に皺を寄せもがいている拓巳。
頭から血を流し死んでしまう。
理佳はふらふらしながら階段を降り、死んでいる拓巳を見てその
まま歩き出す。
〇道(夜)
薄暗い街灯の中理佳がふらつきながら歩いている。
理佳の後姿。
理佳M「私は、もう一人の私の夢の中に閉じ込められた…」
力なく笑っている理佳。
理佳M「もう二度と、出られない」
暗転。
完。
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