※死者に会える橋
登場人物
〇水川美穂(22)
〇四谷綾(22)
〇都築蓮(26)
〇葬儀場・中
水川美穂(22)の彼氏、都築蓮(26)の葬
儀が行われている。
住職がお経を唱えている。
美穂がお焼香をし目を閉じ手を合わせる。
蓮の遺影。
〇同・前
美穂が友人の四谷綾(22)に支えられながら出てくる。
綾「美穂。大丈夫?」
美穂「うん、ごめんね。一緒に来てもらって」
綾「私も、蓮とは少し交流あったから、出とかな
きゃいけなかったしね。でも、ほんと突然だ
よね…」
美穂「うん…」
綾「何で、自殺なんか…」
美穂「…」
〇マンション・美穂の部屋・中(夜)
ベッドの上でスマホを指でタッチしながら連と二人で撮った写真を見ている。
美穂「…」
スマホをスワイプすると二人が橋をバックに笑顔で写っている写真が出てくる。
美穂「これ…」
〇美穂の回想・黒井橋
美穂と蓮が楽しそうに話しながら来る。
美穂「あっ、この橋?蓮が前に言ってたやつ」
蓮「そうそう」
橋の所へ走っていく蓮。
美穂「もぅ待ってよ!」
連を追いかける美穂。
〇同・橋の上
美穂と蓮が箸の策に掴まり景色を見ている。
美穂「景色、奇麗よね~」
蓮「あぁ、ずっと見てられるよなぁ」
美穂「うん」
蓮「こんなに奇麗な景色なんだけどさ、知ってる?ここ心霊スポットなんだ」
美穂「え?そうなの?」
蓮「うん。深夜二時頃にこの橋の中央に来て白い花を一輪握りしめて目を閉じて亡くなった人
の事を思ってたら現れるんだって」
美穂「えぇ?本当に?」
蓮「本当らしいよ。経験してる人も居るって」
美穂「それって。よくある都市伝説の話なんじゃない?」
蓮「だったら、試してみなよ?」
美穂「試す?誰を?」
蓮「俺を」
美穂「蓮を?(笑って)だって蓮生きてるじゃない」
蓮「まぁ、今じゃなくて俺が死んだ時にでも」
美穂「もぅ、変な事言わないでよ」
蓮「変な事じゃないだろ。人間いつか死ぬんだし」
美穂「まぁ、そうだけど…」
蓮「その日がいつ来るか分かんないけどさ」
橋からの景色を見ている蓮。
連の横顔を見ている美穂。
〇回想戻り
スマホを閉じる美穂。
美穂「…」
〇カフェショップ
美穂と綾がコーヒーを飲んでいる。
綾「どう、あれから少しは元気出た?」
美穂「まぁ…」
綾「その感じだと、まだまだ完全復活までとはいかないみたいだねえ…」
美穂「本当に大丈夫」
綾「そう?それならいいんだけど…で、話って何?」
美穂「うん。ねぇこの橋知ってる?」
スマホを綾に見せる美穂。
綾「ん?」
スマホに黒井橋の画像が写っいる。
綾「あぁ、黒井橋?知ってる。彼とも行った事あるし」
美穂「そっかぁ」
綾「何、この橋がどうかしたの?」
美穂「この橋の都市伝説聞いた事ある?」
綾「都市伝説…(考えて)あっ!聞いた事ある!」
美穂「そうなんだ」
綾「あそこの橋で、花を持って亡くなった人の事を思ってたら出てくるってやつ」
美穂「うん…」
綾「それが、どうしたの…?ってか美穂まさか」
美穂「えっ?!」
綾「それ、やろうとしてるんじゃないでしょうね?」
美穂「まさか…」
綾「そういうの良くないよ。本当かどうかも分からない事なんだし、何よりも亡くなった人とは
もう、会えないんだから」
美穂「分かってるって。まぁ本当に…会えるのならって正直なとこ気持ちはあったけどそんな事
あるわけないよね」
綾「そうそう。こんなのね噂話で面白おかしくしてるだけなんだから」
綾のスマホが鳴る。
綾「(スマホを見て)あっ」
美穂「彼から?」
綾が笑顔で頷き電話に出る。
綾「もしもし?うん」
窓の外を見ると綾の彼氏が笑顔で手を振っている。
美穂「綾、もしかして彼とデートだったの?」
美穂に頷く綾。
綾「うん、分かった。もうちょっと待ってて。
じゃあ」
電話を切る綾。
美穂「だったら言ってくれたら良かったのに」
綾「そうだけど、美穂の事も心配だったから。
じゃあ私、行くね」
美穂「うん。綾、ありがとう」
綾「うん」
店を出て行き彼のとこへ行くのを見てい
る美穂。
美穂「…」
スマホを開き、黒井橋の都市伝説の話を
見る美穂。
〇黒井橋・近くの駐車場
美穂が乗った車が停まる。
車から白い花を持った美穂が出てきて橋へ向かう
〇黒井橋
美穂が来る。
橋の中央に行き白い花を握りしめ目を閉
じ連の事を思う美穂。
蓮の声「美穂?}
美穂の身体がビクつく。
美穂「蓮?」
美穂が目を開けようとする。
蓮の声「まだ、目を開けないで」
美穂「え…うん」
蓮の声「今美穂の頭の中に語り掛けてるんだ
けど聞こえる?」
美穂「うん」
蓮の声「美穂がまさか。本当にここに来て試して
くれるなんて思ってなかったよ」
美穂「私も、半信半疑でここまで来たけど、まさかこんな体験出来るなんて」
美穂が涙を流す。
蓮「美穂、泣くなよ…」
美穂「え?私が泣いてるの分かるの?」
蓮「当たり前だろ?美穂の前に居るから」
美穂「本当に?」
蓮「あぁ。目…開けてみていいよ」
美穂が目を開けると、橋の向こうに蓮が笑顔で浮き立っている。
美穂「(声を震わせ)蓮…!」
蓮「美穂」
橋の柵に手を掴み身を乗り出そうとしている美穂。
蓮「美穂。会いたかった」
美穂「私も。ねぇ、もっと近くに来られないの?」
蓮「ここが、限界なんだ。でも。こうやってまた会えたんだからいいじゃないか」
美穂「うん」
蓮「美穂、俺の事忘れないで居てくれたんだな」
美穂「当たり前じゃない」
蓮「俺も。魂は無くなったけど美穂の事忘れてない」
嬉しくて照れながら頷く美穂。
美穂「私、今でも蓮と一緒になれたらなって思ってるんだ。もう叶わない事だけどさ」
蓮「美穂、ほんとにそう思ってる?」
美穂「思ってるよ」
蓮「実はさ、この都市伝説の話、続きがあってさぁ」
美穂「続き?何?」
蓮「(頷いて)今こうして会えた事が出来ただろ?そこから一週間毎日こうして会えた
二人は永遠に一緒に居られるんだって」
美穂「えっ…」
蓮「どうせだったら、試してみないか?」
美穂「一週間?続ければいいの?」
蓮が笑顔で頷く。
一瞬連の目の色が変わるが美穂は気づいていない。
美穂「うん…分かった」
蓮「よし。じゃあ明日も待ってるね」
〇黒井橋(翌日・夜)
美穂が白い花を持ち、橋の中央へ行き目を閉じる。
蓮「美穂」
美穂が目を開けると笑顔の蓮が橋の柵の向こうに居る。
美穂「蓮。今日も会えた」
蓮「会えるって言ったろ?もしかして俺が嘘ついてると思った?」
美穂「そんな訳じゃないけど」
蓮「今日も可愛い」
照れてしまう美穂。
蓮「何照れてんだよ」
美穂「だって…」
蓮「明日も会える?」
美穂「もちろん!」
蓮「こんな時間じゃなきゃ会えないから美穂には申し訳ないと思ってんだけど…許してくれ」
美穂「もぅ、謝らないでよ。そんなの蓮らしくないよ」
蓮「ハハハ。そう言ってくれると嬉しい」
美穂「私、本当は信じてなかったの。まさか亡くなった蓮と会えるなんて、まずありえないじゃ
ない?だから、半信半疑でやってみて駄目だったらやっぱりねってあきらめて帰ろうって思っ
てたんだ」
蓮が美穂の所へ近づく。
美穂「蓮」
蓮「もぅそれを言うのは無しだ。こうやって会えてる事だけ考えろ」
美穂「うん」
美穂が蓮の手を触ろうとすると
蓮「おぉ、もう時間だ。この続きはまたな」
美穂「うん、また明日ね」
蓮「おぅ。じゃあな」
美穂の前から蓮が消えていく。
美穂の顔が少し青白くなっている。
〇 マンション・美穂の部屋・前・廊下
ドアを開け痩せこけ顔が青白い美穂が出てくる。
綾が来るが美穂は気づいていない。
綾「あっ居た!」
美穂「?」
綾「ちょっと!美穂、何してたの?」
美穂「…」
綾「電話しても全然出ないし、連絡もくれないし
心配で来てみたのに。居たのなら連絡してよ」
美穂の様子が変な事に気付く綾。
綾「美穂?何か様子が変よ?顔が青白いし、だいぶ座せてない?」
手で綾を払いのけ引きずるように歩いて行く美穂。
綾「ちょっと!」
美穂の腕を掴む綾。
美穂「離して。漣に会いに行かなきゃいけないの」
綾「蓮?ちょっと、錬君は亡くなったでしょ?」
美穂「亡くなってなんかない」
綾「美穂、どしたのよ?しっかりして」
美穂「離して!」
綾が怯んで、掴んでいた腕を離す。
美穂「綾になんか、分からないのよ!私の…私の気持ちなんて」
綾「…」
綾に背を向け、足を引きずるようにして歩いて行く美穂。
〇美穂の車・車内
前だけを見て運転している美穂。
口は笑っているが。目は笑っていない。
〇黒井橋・近くの駐車場(夜)
慌てて車から出て、白い花を持って橋へ走っていく美穂。
美穂「蓮!待っててね、蓮!蓮!!!」
〇黒井橋
息切れしながらも、白い花を握りしめ目を閉じる美穂。
蓮「美穂」
目を開ける美穂。
美穂「蓮!良かった!会えた」
蓮「どしたんだよ。毎日会ってるだろ?心配だったのか?」
美穂「いや…ねぇ蓮。もう夜だけじゃなくてずっと一緒に居たい。どうしても今の状態じゃなき
ゃダメなの?」
蓮「いや、そういう訳じゃないけど」
美穂「え?何か方法あるの?」
蓮「まぁ、あるけどやってみるか?」
美穂「うん。蓮と一緒に居たい」
蓮「分かった。じゃあ柵に腰かけて」
美穂「分かった」
柵に腰かける美穂。
蓮「俺とここで抱きしめあったら一緒に居られるよ。ずっと」
美穂「本当に?」
蓮「あぁ」
美穂が連の体に手を伸ばし抱きしめる。
蓮も美穂を抱きしめる。
暗転して「ガサッ」と音がする。
美穂の声「ねぇ、これで一緒になれたの?」
蓮の声「んなわけねぇじゃん。バーカ」
「グチャッ」と鈍い音がする。
橋の下の岩場で頭から大量に出血をし手
や足が不自然に骨折して死んでいる美穂
の姿。
終。
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